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アイデアDIY らくらく介護 食器棚用てすり

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あなたはこれまで歩行困難者と暮らしたことはありますか?もしそれが家族であればなおさらですが、真剣に多くのことを考えることとなるでしょう。私の父の場合は、リハビリによりかなり回復したものの、歩行が困難な状態は今もなお続き、杖が欠かせない生活を続けています。

父が自宅で生活をする上でわれわれ家族が一番不安に思っているのは、「もしも転倒してしまったらそれがきっかけで頭部を損傷し、麻痺がひどくなってしまうではないか」ということです。本人も転倒時の頭部打撲は致命傷になることを重々承知しており、歩行するときは杖を使いヘッドギアを欠かさず身に着けています。

幸い本人が腐ることなく前向きに暮らしていることが、私たち家族にとっては大きな救いとなっています。そんな家族のために、私に出来ることは、すこしでも暮らしやすい環境を整えることだけです。

 

歩行困難者の暮らしを助ける「介護用てすり」を食器棚に備える

手すり作りのキッカケとなった食器棚の買い替え

50代の方々の親は80歳前後の方が多いのではないかと思います。この年代になると60代の元気なおじいちゃんおばあちゃんの時とはずいぶんと違ってきます。

特に老々介護の領域に入ると、知らず知らずのうちに介護する側に過剰な負担となっているようです。気丈に振舞っていても、老いた体にストレスとなっているようです。医者からかは、夏バテと診断されて胃の良性ポリープ切除と点滴投与のため急遽1週間ほど母が入院することとなったのでした。

視床出血発症後は杖が欠かせない父を介護してきた母は、気が休まらない日々を送ってきたことでしょう。母の入院期間中は家族で代わる代わる実家の父の様子を見ていたのですが、そのときに食器棚の異臭に気づくこととなったのです。異臭の原因は食器棚の内側に発生したカビでした。

高齢者は視覚、聴覚、体感温度などいろんな感覚が鈍ってくるのは当たり前で仕方のないことです。ですから、カビがまん延した食器棚の食器を使ったことが母の体調不良の引きがねになったのではないかと思っています。もともと、私が子供のころから使ってきた食器棚ですので、もうとっくに寿命を越している食器棚でした。

 

食器棚すえつけ場所の「高さ制限」への対応

いざ、食器棚を探してみるとなかなか良いサイズのものが無くて困ってしまいました。50年くらい前に古民家を部分改築したキッチンのため、無理やり感がいっぱいの作りで寸法が中途半端なのです。床から天井まで170センチのところと吹き抜けのような感じの天井が合わさっていて、動線の確保を考えると、どうしても天井高170センチのところに食器棚を収めたいのですが、いいなと思う食器棚は高さ180センチのものがほとんどなのです。

なかなか良い食器棚がなくネット検索疲れしたため、アウトレット家具店に行ったみたのですが、やはりここでも主流は高さ180センチの食器棚なのです。価格はネットでの販売価格とほぼ同じ印象をうけましたので、DIYで台をつくり嵩上げすれば良いかと思いそこに展示してあった高さ120センチの小型の食器棚を購入することにしました。

 

古い食器棚を改造して嵩上げ用の台に

カビが生えていた古い食器棚は高さが165センチくらいでちょうど納まっていて、大きめの物を収納する下部と食器を収納する上部に分かれ、10センチくらいの段が付いていたため、父の手すり代わりになり重宝していました。

古い食器棚のレイアウトとカットライン
古い食器棚 e1674433913896

 

カビが生えていたのは上部のガラス戸の部分でしたので、そこは廃棄しますが、引き出し部を新しい食器棚の嵩上げ用の台に使えるのではないかと直感的に思いました。

何故かというと、テレビでみた「DIY番組」や「リフォームの匠」の中で、古い家具を改造して再利用するシーン見ていたため、まるで自分が経験したかのようにインプットされているからです。

そこで、実は初めてなのですが、既製品の食器棚を丸ノコとのこぎりで上図の赤い点線のところでガンガン切断してみました。

古い食器棚の一部を再利用
古い食器棚の切断 e1680241631713

 

再利用する部分は小物入れの引き出しとなっていますので、引き出しをそのまま使えるようにしています。ただし、新しい食器棚に比べ幅が広いため横方向でも向かって右側をカットして継ぎ戻しています。

一番右の引き出しは開口幅に合わせカットし、飾りとしてはめ込んでいます。

古い食器棚の一部を「嵩上げ台」として利用
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食器棚と手すりの位置

手すりの構成としては、下図にてオレンジで表している縦柱を食器棚の手前の両脇に配置しています。その際、扉を開けた時に扉と縦柱が干渉しないことを確認して位置決めしています。

手すりのメインは縦柱に貫通した直径30ミリの丸木となりますが、縦柱も手すりとして機能します。そのため、縦柱に使用した60ミリ×30ミリの角材には角部に鉋をかけ丸みを与え、つかみやすいようにしています。

食器棚に対して手すりの配置を上から見た様子

キッチンの天井高さと動線に配慮し食器棚の位置を決め、正面側の手すりをつくりました。当初は正面側の部分の手すりしか考えていなかったのですが、手すり用の丸木が余ったため食器棚の横側にも手すりを追加することとなりました。食器棚の背面スペースは物置として使用したいとのことでしたので、横側の下部にはフレームを配置しない構造とし、バリアフリーを意識しています。

食器棚と手すりの配置図
介護用 食器棚用てすり平面図 e1674433998719

 

食器棚に対して手すりの配置を正面から見た様子

下図にてオレンジで表している縦柱は天井と床にしっかり固定しているため非常にしっかりした造りとなっています。

この手すりは食器棚の中の食器を出し入れする際はもちろん、居間から風呂への移動の際も歩行の際に若干ハンディの残る父にとっては、動線における安全確保の重要なツールとなります。

食器棚の正面に配置された手すり
介護用食器棚 正面 e1674434038426

 

食器棚の上と左右に手すりを配置
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食器棚に対して手すりの配置を横から見た様子

食器棚の裏側スペースは物置として使用し、また、ゴミ出しを日課としている父のワークスペースとしても活躍しています。

食器棚を横から見たときの手すり配置
介護用食器棚 側面図 e1674434081577

 

食器棚の側面にも手すりを配置
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ホールソーによる穴加工と丸木材の手すり

実家の食器棚は居間と風呂との動線上にあるため、手すりをつける際は、あまり張り出さない作りが良いではあろうと考え、今回の手すりは「手すり用の金具」を使わずに取り付けるようにしています。

ホームセンターで購入した丸木は手すり用のものではないものの直径は30ミリありますのでかなりしっかりとしたものです。

当初、柱となる角材に自在錐で穴をあける加工法をイメージしていました。しかし、いざ加工しようかなと自在錐を取り出してみたら、刃の形状からあまり厚い木材に穴をあけることができないことが分かりました。(いつか使いたいと思って買っていた自在錐ですが、未だ使ったことがありません。下の写真 右)

 

自在錐とホールソー

下の写真 左側は急遽購入したDIY用のホールソーです。正直かなり頼りない雰囲気が漂っています。会社で使用する金属用のホールソーとは全く作りが異なり「ほんとにこれで大丈夫なの?」という思いをぬぐい切れないままとにかく使ってみました。

結果として、何とか穴はあけることができました。ホールソーのセットの中でもっとも手すりの丸木径に近い直径32ミリの刃で穴をあけてみました。しかし、穴の仕上がりはさほど良くないようです。

DIY用のホールソーと自在錐
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縦柱に手すり用の丸木を通した様子

写真からも分かる通り、丸木に対して穴はやや大き過ぎるためそのままでは手すりをしっかりと固定できません。そこで、写真の裏側からビスで固定しています。

ホールソーの穴ぬ丸木(手すり)を貫通
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手すりを兼ねた支柱の固定

支柱の固定にはL字に曲がった金属ブラケットをつかっても良いと思います。ただし、金属ブラケットを使用した場合、わずかではありますがブラケットがちょっとした障害物になりかねません。もしも、私が行った固定法を試される場合は、端材に下図のような下処理をおこなってから固定されることをおすすめします。

下図のように小さい木材にビスが集中した場合、下穴をあけないままビスを何本もねじ込もうとすると木材が割れやすくなってしまいます。また、単純に細い下穴だけをあけた場合は、取り付け相手の木材にビスが食らいつく部分が少なくなり、しっかりとした締め付け力を確保できません。

十分に長いビスを用意できる場合は構いませんが、ビスの長さに不安を感じるときは、下図のように「段付きの穴」をあける下処理をおすすめします。その場合、まずはネジ部の外径と同等の細い下穴を貫通させ、その後に「ビスの頭よりやや大きな径」のドリルで「深座ぐり」を加工します。

深座ぐりの加工では、ちょっと油断するとキリが一気に深く入ってしまいますので慎重に行ってください。

小さい木材にビスが集中するときの下穴加工
手すり柱の固定 e1674434130223

 

床に縦柱を固定した様子

小さい木材を使った柱の固定法
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天井に縦柱を固定した様子

小さい木材を使って柱を天井に固定
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まとめ

これまで使用してきた古い食器棚は、たまたま上段と下段の繋ぎ部の奥行方向に適度な段差があったことが幸いして、歩行に難を感じる父にとっては都合の良いものでした。しかし、いざ食器棚を新しくしてみると、父にとってはそれまであった手すりを奪い取られたも同然であり、生活環境が悪化してしまったと言えます。

そこで新しく手すりを追加することとなったのです。新しい介護用の手すりは食器棚の扉を開閉する都合で理想的な腰高さの手すりとはいえませんが、いくらか安心感をもたらす存在であってほしいと願っています。後日聞いた話では縦柱を重宝しているとのことです。やはり、高い位置の手すり(丸木)は使い勝手がよいとは言えないかもしれません。

それから、ビジネスとして成り立つほど需要があるのかはわかりませんが、家具そのものに手すりが備わったユニバーサルデザインの家具が選択肢として存在してもよいかも・・・。(ここは独り言として軽く聞き流してくださいね。)

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iboxnj
マイペース派で、「変人」に憧れる管理人のアイボックです。必要は発明の母といわれるように、暮らしに直面する問題を一つ一つクリアする事をやっていたら、些細なものからちょっといいアイデアと思えるものまで出来ていました。そのときは必死にやっていて、気づいてなかった。いつの間にかDIYが好きになっていたようです。