日本では古くから防風林で家屋をまもるという知恵がありました。そして、我が実家のように蔵や納屋で母屋を囲むような配置は古民家では珍しくないように思います。
母屋が蔵や納屋に囲まれることで日当たりの良い中庭とプライベート空間を作っていたのだということを蔵の解体により痛感しするとともに、先人の知恵に感心させられるばかりです。
これから夏に向かって台風等の防風対策を進めなくてはいけないとの思いから、古民家の蔵を解体した跡地に母屋を守る防風というより風の勢いを弱めることをメインとしたフェンスを作ろうと動き出しました。
また、この防風フェンスはプライバシー確保のためにも大いに役立つものと考えています。
アイデアを活かして 防風フェンスをDIYしてみる
まずは、CADで防風フェンスを検討
防風フェンスの板張りとブロックの組み立て検討図
防風フェンスを作るにあたり、まずは図面を書くことでレイアウトを検討してみました。大まかな全体の作りは最初の検討図と変わりなく仕上がることができたと思います。
防風フェンスの全体レイアウト
フェンス板は風をすべて遮断するような考えはなく、ある程度、風を逃がすために交互に取り付けたいと考えました。そして、板が無い部分には角材を配置することで色のアクセントと風を逃がすためのスリットになるようにしています。
初期の設計では板を母屋側に角材を外側に計画していたのですが、よくよく考えると強風のほとんどが台風がらみの南風が多いことから、フェンス板が風で吹き飛ばされないように風上になる外側に張るように設計変更しています。
フェンスの強度対策の検討 絞りだしたアイデアとは
実は、このフェンスの強度対策に一番頭を悩まされ、実に多くの時間を使うことになってしまいました。
最初に作った中古住宅のウッドフェンスとは立地条件が異なり、風を弱めてくれる構造物が近くにないために、フェンスは強風を直接受けてしまうのです。
そこで、フェンスが壊されないようにするために、丈夫なアルミ角パイプを柱に使用した高強度の構造にする必要がありました。
そして、基礎部分はコンクリートフロックを寄せ集めることで重量を重くし、さらに基礎コンクリートブロックを地中に埋めることでさらに安定感を増し、コンクリートブロックをモルタルで一体化することで柱全体の強度を上げるようにしています。
基礎ブロックと支柱の構造を検討
いろいろと悩んだ末に、コンクリートブロックのサイズを少し大きめの120mm厚を使用することでアルミ角パイプがコンクリートブロックの穴に入ることがわかり、ようやくアイデアが定まり最終案に至ったのでした。
フェンスの基礎を作る
アイデア面ではフェンスの強度確保で頭を悩まされましたが、いっぽう製作面ではフェンスの基礎を水平に仕上げることができるのかが最大のポイントだといえます。それでいて一番不安な部分でもありました。
コンクリートブロックを設置する溝を掘る
古民家の蔵を解体した跡地
作業に取り掛かる前の状態
防風フェンス施工場所のレンガを撤去
電動ピックを使用してレンガを剥している様子です。おかげで作業がはかどります。
レンタル電動ピックにて作業
作業機械レンタルのすすめ
電動ピックは建機レンタル店での一日レンタルをおすすめします。私が利用したショップでは先端具(ノミ)約1000円は購入し、本体だけレンタルするシステム。一日のレンタル料は5~6千円くらいでした。
電動ピックを頻繁に使用するのであれば購入もありですが、かなり高価です。
コンクリートプロックを埋設する溝の完成
防風フェンスの基礎となるコンクリートブロックは支柱部分では3段重ねとなりその他は2段重ねとなります。その内の「1段目の全てのコンクリートブロック」下の写真にある溝に埋設されることとなります。
コンクリートブロック基礎の埋設穴
コンクリートブロックの設置作業
大まかなアウトラインを意識して、やや大きめに掘っていた溝をコンクリートブロックが設置できる状態に仕上げていきます。
レーザーにてブロック設置溝のレベル調整
まずは、レーザーで溝の現状レベルを計測します。レンガ上面(一番高いところ)を基準面として、埋設するブロック一段分の上面が基準面と同じになるようにします。
レーザーを使って溝のレベル調整
作業のポイント
屋外でレーザーを使用するときは、出来るだけ暗い環境がおすすめです。日差しの強い時間帯ではほとんど役に立ちません。
早朝や夕暮れ時を計画的に有効活用するのがおすすめです。どうしても明るい環境で水平確認作業を行わなくてはいけない時はオートレベルが良いでしょう。
ちなみに、オートレベルをレンタルできる建機レンタルもしくは計測器レンタルがあるようです。オートレベルの使用経験がない場合は、必ず経験者にご相談あるいは指導をお願いした方が良いと思います。
つなぎとして粉末のセメントを溝に撒く
レンガ上面(基準面)から溝の底面までの距離がコンクリートブロック1個分(190mm)+バラス分(約20~30mm)+モルタル(約10~20mm)になるように調整してから「つなぎ」の粉末セメントを撒いた様子です。
土と基礎のつなぎとして粉末セメントを散布
作業のポイント
基礎作業等で地面に穴を掘るときは、ブルーシート等で養生できるように準備しておくと良いでしょう。
基礎づくり作業は時間が掛かり、日をまたぐ状況が発生します。上の写真にあるようにブルーシートの養生で雨をしのぐことができ、「掘った穴」と「のちに埋め戻す土」も雨に濡れなかったため作業がしやすく助かりました。
バラスを敷いた様子
本来であれば、このバラスを敷いた状態で転圧機で固めるのが良いと思います。私は転圧機までは準備していませんので、足で踏み固める程度にとどめています。この時バラスと粉末セメントを織り交ぜながら撒いています。
基礎作りの考え方 (匠を参考)
基礎ブロックを積上げたあとに溝に水を差してバラスとコンクリート基礎ブロックと土を一体となって固めるようにしています。
参考記事はこちら
・アイデアDIY フェンス 記事内の沓石(くついし)の固定方法
粉末セメントを散布しながらバラスを敷き詰める
ブロックを順に敷いている様子
仮置きしたブロックを1個づつよけてはモルタルを敷いて、並べているところです。1段目のブロックは、基礎として地中に埋めてしまいます。
モルタルで繋ぎながらブロック積み
支柱を設置する部分は2段目
アルミ角パイプを支柱として6本設置します。設置予定部分だけを2段目のブロックを組んで一旦モルタルを乾燥させます。この時バラスに混ぜた粉末セメントにも水を差してバラストと土と基礎ブロックを一体化させるように意識しています。
水を差しバラスと基礎ブロックを一体化
作業のポイント
コンクリートブロックを一気に積み上げても悪くはないのですが、今回は支柱の埋め込み作業があるため、あえて支柱部分の2段目で作業を止めています。
支柱部のブロック積みレイアウト
アルミ角パイプで支柱を作る
基礎を乾燥せる間に、支柱となるアルミ角パイプを準備します。
定尺4mのアルミ角パイプから2mの支柱を作る
定尺品なのですが、カラー部分がキレイに使用できるように、実際の全長は4080mmくらいありました。そして、片方の端部に色づけされていない部分があり切れ込みがあります。
もし、色付けしていない部分をカットしてちゃんと2000mmを2本カットして図面通りに製作しても良かったのですが、高速カッターの刃の摩耗と騒音を抑えることも考慮しカット数を減らすことを選択しました。
今回の製作品では支柱の片方を基礎部分に埋め込んでしまうため、色付けしていない部分を基礎に埋め込めば問題ありません。
高速カッターで角パイプを切断
この高速カッターは父が花き栽培用ハウスを作っていたときに使用していたものです。私の場合は、たまたまこの機械があったのでアルミ角パイプのカットに役立ちました。
今回のように、□60mmアルミ角パイプをカットする場合、金属用の手引き鋸ではかなり厳しいと思われます。多分ヘトヘトになりそう。
高速カッターを使ってアルミ角パイプを切断
ご自宅でカットする場合は、ディスクグラインダーに切断刃をつけてカットすることも可能です。しかし、ディスクグラインダーの使用に慣れていないとかなり危険かと思います。
バイス等でしっかりとアルミ角パイプを固定し、手袋、保護メガネ、保護マスクの使用をおすすめします。
ホームセンターの利用
ホームセンターでは、バンドソー、高速カッターなどを備えているところもあると思いますので、機械を借りてご自身でアルミ角パイプをカットする。
あるいは、ホームセンターのカットサービス(ワンカット数十円~)利用するのも良いでしょう。
アルミ角パイプの切断口をヤスリで手入れ
金属材料を切断すると、必ずカエリ、バリ等が発生します。そのままでは、ケガのもとになりますのでヤスリ等できれいに除去することをおすすめします。
カエリ、バリをヤスリで除去
作業のポイント
カエリやバリを処理する際、ヤスリをかけすぎると仕上がりが汚くなってしまいます。
「糸面取り」といって、カットした切断面の角(ここでは板厚2mmのアルミ角パイプの2mm幅の切断面)に細い糸のような削り跡が残る程度に角を落とす処理を行うと良いでしょう。
糸面取りのイメージイラスト
アルミ角パイプ用のエンドキャップを打入れ
アルミ角パイプの切断面ですが、必ず仕上げをしてからエンドキャプを取り付けましょう。エンドキャップを取付けることでアルミ角パイプ内部への雨水の侵入を防ぎます。
作業のポイント
角パイプの外側は「糸面取り」で仕上げ、エンドキャップが入る切断面の内側は、やや大きめに角を落とすとかキャップのはめ込み作業が楽になります。
アルミ角パイプの切断部にエンドキャップを取付け
アルミ角パイプ支柱の養生
作業のポイント
アルミ角パイプの養生シート剥しは、必要最低限に留めましょう。後工程の作業で角パイプにキズが入らないようにするため
養生シートは残したまま
アルミ角パイプの支柱を基礎に設置
今回の防風フェンスDIYのキモとなる部分です。
アルミ角パイプのレイアウト確認
固まった1段目の基礎にアルミ角パイプをあてて納まり具合を確認しています。乾いた基礎モルタルが邪魔になる部分は除去して整えます。
ブロック基礎をぐり石で固定
作業のポイント
一度、地面を掘ってから基礎を設置後に埋め戻す場合、通常「ぐり石」などを使用するようですが、今回は最初に剥したレンガをハンマーで砕いて「ぐり石」の代用品として再利用してみました。
モルタルで基礎上面の仕上げ
今回の基礎は、コンクリートブロックを積上げる構造しています。型枠で作り込むこともできるのですが、生コン車を手配する大掛かりなものとなってしまいますので、簡易的手法を選択しています。
コンクリートブロックの繋ぎ部の穴にはコンクリートを充填。支柱周りのブロックには鉄筋とコンクリートを打設。その他の穴にはバラスを追加してコンクリートを少なく抑えています。
モルタルで基礎上面を仕上げ
作業のポイント
フェンスの支柱部の基礎には鉄筋も入れて補強しています。また、積上げたコンクリートブロックが一体となるように、モルタル2層仕上げにしています。
コンクリートプロック、支柱、鉄筋のレイアウト
アルミ角パイプ支柱にベース角材60×30を固定
フェンス板を支柱に固定してフェンスを作るのですが、アルミ角パイプの支柱にたくさんの板を固定するのは大変であること。また、フェンス板は天然板を使用しますのでいくら防腐塗料を塗っているとは言え、いずれフェンス板の張替えが必要になってくると考えています。
フェンス板の張替えのたびに直接アルミ角パイプにビス止めすると、アルミ角パイプはビスの穴だらけになってしまい耐久性を考えるとあまり好ましくありません。
アルミ角パイプと角材のハイブリッド支柱
構造のポイント
□60mmアルミ角パイプの対面に□60×30mmの木材を1本づつビス止めして、異種材料合成柱(ハイブリッド構造)を作っています。
仕上がりの支柱断面は□120×60mmとなり、いわゆる、「3本の矢」みたいにして曲がりにくい丈夫な柱になっています。(断面係数を大きくしています。)
ハイブリッド構造で支柱の剛性アップ
支柱ベース コンクリートブロックの一体化
支柱周りのコンクリートブロック上面はモルタルで固めて基礎の一体化を図っていますが、基礎の正面は段違いの状態です。コンクリートブロックでアルミ角パイプを挟み込んでいるため段差が生じてしまいます。
簡易型枠で支柱ベースの型を修正
最初から型枠を組んで、生コンを流し込んで基礎を作ることも可能なのですが、生コンを手配すると高額になるのではとの考えから全周型枠を組んで生コンを流し込むやり方は選択肢に入れていません。
それで、下の写真のような簡易的な部分型枠を組んでセメントを流し込む方法に挑戦してみました。型枠を組んでコンクリートを流し込むやり方は、これまで何度がやってみましたが、うまくいったり、うまくいかなかったりという感じです。
型枠を組んでコンクリートを流し込む
悪い型枠の例
廃材の板と角材を使って思いつきで簡易型枠を作ってみたのですが、上の写真でも分かるように、下図では下の方のセメントがつながっていないのでコンクリートブロックが一体となっているとは言えません。つまり、基礎が弱い状態と言えます。
型枠の悪い例(ブロックが一体化できていない)
手塗で手直し
上図のように、型枠が失敗していて、しかも流し込んだコンクリートが硬すぎてうまくきれいに仕上がりませんでした。そんな時は、手塗で仕上げるとよいでしょう。
型枠にコンクリートを流し込むときは緩すぎると型枠から漏れたりします。しかし、硬すぎるとうまく型に馴染まないので難しいものです。
支柱基礎ベースの上面は再度モルタル仕上げ
2層目のモルタル仕上げにより、基礎に一層の一体感がでてきました。
支柱の基礎上面は2層仕上げ
作業のポイント
ブロック基礎をモルタルで仕上げることで、外観をキレイに仕上げることも意識していますが、それと同時に基礎の重量を増すことで安定感を増すことと、ブロックの崩れ落ち防止をねらっています。
型枠の一例
本来であれば、せめて下図のような型枠とし、セメントでコンクリートブロックをきれいにつなぎ合わせるのが望ましいでしょう。もしくはもっときれいに仕上げるのであれば、周囲をすべて型枠で囲むとよいでしょう。ただし、本格的に型枠を大きくするとかなりの量の生コンが必要になります。手練りの作業では相当なハードワークになると思います。もしも、ミキサーを手配できるのであれば型枠できれいに仕上げるのもいいですね。
型枠の改善案(ブロックが一体化する)
フェンスの板と角材のコンビネーション
フェンスには板と角材と形状の異なる材料を組み合わせ、また色も変えることで、フェンスの単調な表情にアクセントをつけてみました。
風上側に板を風下に角材を取り付け
冒頭のCADと比較していただくと分かると思いますが、実は最初の計画と違い板の張る向きを逆に変更しました。
理由は、風向きに対して、より安全な構造とするためです。下の写真のフェンスの手前側が母屋がわであり、方角は北となります。
つまり、フェンスの向こう側が南側となります。台風による強風は南側から吹きつけることが多くなります。
台風の風向きを考慮しフェンスの板張り構成
構造のポイント
強風が吹きつけてくる方向にフェンス板を取り付けると、フェンス板を風にはぎ取られるリスクが低くなります。また、フェンス板を支柱のどちら側に張っているかに関わらす、支柱の強度が低い場合は支柱が折れることもあります。
アルミ角パイプの補強と角材の増量
風下から見るとこんな感じです。当初の計画ではフェンス板の間に角材を1本づつ設置する予定でした。
しかし、角材を1本ずつでは隙間が大きすぎてなんとなく「物足りない感」があったため、視線のレベルだけ角材を追加して2本づつにしてみました。
見た目の雰囲気で微調整
風上側から見た様子
一応の完成状態ですが、ここではまだ補強用の支柱は取り付けていません。
初期図面の状態の完成
補強用の支柱を追加
この段階でフェンス板は意外としっかりしてはいたのですが、支柱間隔を約1600mmと広く設定しているため、フェンス板のたわみに少々不安を感じていました。そこで、補強用の支柱をアルミ角パイプの支柱の中間位置に追加することとしました。下の写真から分かるように、それほど大きな角材を使用してません。
それから、補強用支柱の追加にあたり、基礎用コンクリートブロックも追加しています。補強用支柱の固定にはステンレス金具とステンレス製のコンクリートビスを使用しています。そのため、コンクリートビスをしっかりと施工できるようにモルタルを盛っている様子をご覧いただけるでしょうか。
補強支柱の固定
母屋側から見たフェンスの様子
防虫・防腐水性塗料を2色使って仕上げています。
2色仕上げのメリット
2色仕上げにすることで見た目のメリハリがでてきますので、単調になりがちなフェンスのデザインが表情豊かになります。
「ライトオーク色」・・・下の写真の明るい塗料色
「ウォルナット色」・・・下の写真の濃いこげ茶のような塗料色
2色仕上げでモダンな雰囲気
2色仕上げのデメリット
フェンスのメンテナンスの際、ペンキの塗り分けが面倒になります。きれいに仕上げるポイントとして、塗装作業前の養生をしっかり行うことが必要になります。
できれば、色別に作業日をずらすことをおすすめします。
母屋の反対側からみたフェンスの様子
母屋の反対側からフェンスを見ると、2色仕上げになっていることがわかりずらく、デザインが単調な印象になっています。
後から追加した補強用の支柱ですが、当初は濃い色の「ウォルナット色」で仕上げることでアクセントとしオシャレな印象になると考えていまいした。しかし、今後のメンテナンス塗装の手間を減らすことを優先して「ライトオーク色」を選択しています。
完成した防風フェンス
まとめ
フェンスのメンテナンスフリーを望むならばアルミ製がおすすめですが、本格的なフェンスを作るとなると、実はかなりの費用がかかることをご存じでしょうか。特に、ある程度のプライバシーを確保したいと考えたときは、それなりのフェンス高が必要になりますし、ある程度の視線を遮断できる構造でないとプライバシー確保の効果がありません。
しかし、フェンスが大きくなれば、それに応じたしっかりとした基礎が必要となります。今回はコンクリートブロックの組み合わせを工夫するというアイデアで、特別な技術がなくても丈夫な基礎を作ることができるのではないかという挑戦です。そして、アルミ角パイプと角材の組み合わせるというアイデアで強風に耐えるための丈夫なハイブリッド支柱ができたのではないかと思っています。
また、機能面だけでなく2色塗装による仕上げにより、デザイン性をレベルアップできることを実感しましたが、あなたはどう感じました?色の組み合わせを考えるのもDIYの楽しみの一つだと思うのですが、どうでしょうDIYでオシャレなフェンスを作ってみませんか。
プロモーション |