まだ、私がエアコンを使い始めるまえのことですが、屋外にむき出しの状態で置かれているエアコンの室外機になんとなく違和感をかんじていました。どう見ても、「こんな状態で屋外に放置したのではすぐに痛んでしまんのではないか?」と。実際、パネルが錆びてしまっている古いエアコンの室外機を見た記憶が、なんとなく残っています。
今となっては以前のことはよく分かりませんのでその事はさておき、現状に目をむけてみると、例えば、三菱電機のエアコン室外機では「ポリエステル樹脂粉体塗装」という環境にやさしく耐候性が高い塗料が使用されていることが分かりました。
粉体塗装では液状塗装に比べて比較的硬い塗膜を形成し、一回の塗装でも溶剤塗装(液状塗装)の約5倍になる100ミクロンの膜厚を形成することができるため、非常に防錆効果が高いのです。ですから、室外機をむき出しの状態で屋外に設置しても設計上の耐用年数10年をクリアできるという判断だと推測できます。
しかし、そうだとしても、消費者としてはきれいな状態で長く使いたいものですよね。ですから、見た目にもシンプルでエアコンの効率を妨げないことを意識して室外機の屋根を作ってみました。
エアコンの効率を悪化させないことを意識したシンプルな室外機の屋根の作り方
出来るだけシンプルでエアコンの効率を阻害しない室外機の屋根
実家に設置した一台目のエアコンの室外機は、直射日光と雨をしのげて適度に風通しが良い場所に設置できたため何の心配もなかったのですが、2台目のエアコンの室外機にはアルミ蒸着マットタイプの室外機カバー(市販品)が取り付けてあったのでした。
エアコンを大事にしたいとの思いから、室外機にカバーをつけていたのだと思いますが、
アルミ蒸着マットタイプのカバーはあまり良いものではと思います。
なぜなら、
・第一に室外機にマットを直接固定するため、室外機のボディーとマットの密着部に雨水が長く保持されやすく、腐食しやすい環境だといえるからです。
・第二に、アルミの蒸着部で直射日光を遮断する効果はあるものの、カバーが室外機に密着していることから保温性の良いマットで保温するような状態になっています。
そもそもエアコンの室外機は熱交換機であるため放熱性能が良いことがエアコンの効率アップにつながると考えているからです。
他にある市販品の室外機カバーでは、美観を重視しており室外機をすっぽりと覆ってしまう形状のものがほとんどのように感じます。これではエアコンの効率が悪化するとしか思えません。
そこで、室外機にあたる直射日光を遮断し、風通しが良いシンプルな室外機の屋根を考えてみました。
シンプルな構造の室外機の屋根(カバー) 組み立て図
まずは、側面に覆いを作らないことで、
・熱交換器を通る空気の流れを遮らないことを意識しています。
また、
・熱がこもらないようにするために、空気の通り道を確保した屋根材の取り付け方法としています。
それから、コンクリートブロックの穴の使い方を工夫することで、木の支柱をコンクリートで埋めない構造としています。こうすることで雨水による木の腐食を防ぐことができると考えています。
シンプルな室外機の屋根 レイアウト
材料の切り出し寸法
こちらはあくまで参考寸法となります。実際のところ室外機の寸法はモデルにより違いますので、よくご確認ください。ちなみに、わたしのCAD図面では我が家の三菱エアコン室外機をもとにして描いています。(幅700mm、 高さ660mm、 奥行250mm)
室外機屋根の材料カット寸法
アイデアDIY 「エアコン室外機の屋根」の製作過程をご紹介
エアコン室外機のためのDIYによるアイデア屋根について実際の製作過程を写真でご紹介します。この製作品も出来るだけ費用を抑えることを考慮しています。
材料の手入れ
室外機の屋根材は、防風フェンスを製作したときの余りの野地板を利用してます。下の写真のように板の表面は若干カビが発生して黒ずんでいましたが、電動鉋で0.2mmくらいの削り量で2回ほどかけると、野地板の荒い木肌が滑らかに仕上がります。もちろん黒ずみもきれいに取り除くことができました。
野地板にカンナをかけて表面仕上げ
室外機のベンチレーション屋根を取り付けるためのベース
屋根には換気機能を持たせるために屋根板が隙間を開けながら段々に取り付けられるようにしています。屋根に使用する野地板をギザギザ状に加工した面に取り付けるため、この材料は、ホームセンターにてやや厚めの板を選んでいます。ケガキ線に沿ってジグソーにてカットしています。
作業のポイント
ジグソーの刃の速度調整では、ある程度速くした方が安定して加工できます。
ジグソーは刃が上下に往復運動する電動工具ですが、材料と刃がぶつかって突き上げられる経験をしているため苦手意識があり、ついつい刃の速度を遅くしてしまっていました。
最初は5段階ダイヤル調整の2くらいでゆっくりと刃をうこがしていたのですが、刃が木のスジに引っ掛かりジグソーが跳ね上がってしまったのです。そこで試しに速度を4にしてみたら非常に安定してカットすることができました。
ただし、これは厚さ15mm程度の木材の場合ですので、異なった材料をカットする場合など条件が変わった場合は状況に合わせて刃の速度調整が必要になるかもしれません。
ジグソーを使ってベンチレーション屋根のベースをカット
カットした材料を塗装
塗料は防風フェンス製作で使用したときの余りを使用しています。水性の防腐・防虫塗料です。
材料に水性 防虫・防腐塗料を塗る
図面の通りにカットし、塗装したすべての木材部品
仮組して屋根板を形にします。
この室外機のベンチレーション屋根(カバー)は実際の据え付け場所である実家のエアコン室外機を見ないで自宅の室外機の寸法だけを測って図面を起こしているため、いったん仮組をしてみることにしました。
最初から据付場所で屋根を組み立てても構いませんが、作業環境があまり良くないし、また初めて採用する支柱の固定方法であることもあり、広い場所でビスを間引いて仮組して形にしてみました。
フレームの仮組
アイデアDIYの核となる部分
コンクリートブロックを使った簡易的な基礎にすることで設置しやすくできるのではないかと考えました。
・特段に基礎を埋設しなくても、地面とコンクリートブロックの接地部をモルタルで固めたり、あるいはステンレスのブラケットとコンクリートビスでコンクリートブロックを固定できると考えています。
・もう一つのポイントは木材の支柱をコンクリートに埋設しないでコンクリートブロックの穴に木材を貫通させながら突っ張る構造とすることで、木の腐食を防ぎながら構造物を安定させるのではないかと発想しています。
コンクリートブロックの穴を使った木組み
「室外機の屋根」仮組完成の様子
図面を実際に形にしてみると、見えてくるものがあります。今回は特に実際の設置場所を見ないで想像しながらデザインしたので、形にしてみるとそのままでは据付不可能であることが分かってきました。
まずは、奥行のスペースがそこまで余裕が無いこと。それから、室外機につながっている配管があるため基礎のコンクリートブロックを奥の方に設置できないこと。それから室外機の据え付け高さは、私が描いた図面よりさらにコンクリートブロック1段分だけ高く据え付けられていました。つまり、手直しが必要になります。
室外機のシンプルな屋根(仮組)
実家の据え付け場所に合わせた室外機屋根の手直し作業
現場で試行錯誤しながら行った手直しを後から図面に反映しています。
室外機屋根の基礎と支柱の固定方法を変更
根本的に室外機の高さが違うことに関しては、支柱を長いものに作り直し変更することでアイデアの核となる「コンクリートブロックの穴を使った木組みによる固定」を表現してもよかったのですが、根本的に変更することにしました。
なぜなら、実際に仮組してみると設置場所がきれいな水平面が出ていないと木材とすべてのコンクリーブロックの穴を密着させることは困難であることが分かったからです。それから、期待していたほどの剛性がなく「しっかり感」に不満があったからです。
室外機のシンプルな屋根(ベンチレーション機能)
高さと奥行問題と「しっかり感の改善」のための手直し
奥行の問題についてはコンクリートブロックを隙間なく据えることで壁際の配管をかわすことができています。また、高さについては支柱を作り直すことなく取り付け位置を高くし、固定方法をコンクリートブロックにアンカープラグを打設しステンレスビスでしっかり固定することにしました。つきなみではありますが、ビス止めすることで十分な「しっかり感」を得ることができました。
ちなみに、あとからコンクリートブロックと接地面をモルタルで固定し、屋根の最上部を壁面に固定しています。
室外機のシンプルな屋根 固定方法を変更
奥行の対処として屋根板を減らす
基礎となる部分で奥行を狭くしていますので、それに合わせ屋根板の枚数を9枚から6枚に減らしています。それから当初の屋根の傾斜に比べやや勾配がきつくなっています。
屋根板数を減らした状態
屋根板の空気の通り道(換気機能)
できるだけ熱気がこもるのを防ぐための工夫として、屋根板の継ぎ目に隙間を設けています。
室外機のシンプルな屋根(換気機能)
シンプルで開放的なデザイン
実家のエアコン室外機に屋根を取り付けたアイデアDIYです。屋根板の最も壁側はあえて板を取り付けず隙間を確保しています。そうすることで室外機のファンにより空気が循環しやすくなると考えています。
室外機の熱がこもらず、効率を妨げない構造
自宅のエアコン室外機にも屋根を設置
エアコンダクトや雨どいがあったり、また横方向の制約もあるためコンクリートブロックの配置と数量を変更し、家の外壁に屋根を固定するためのベース材を取り付ける方法としています。
自宅の外壁はALCパネルを使用しているため、ベース材の固定にはALC用のビスを使用しています。また、屋根板の枚数はこちらも6枚にしています。通路スペースの確保を考えると6枚以上はきびしいようです。
自宅用 室外機のシンプルな屋根(ベンチレーション機能)
屋根を設置する前
こちらは、私が最初に買ったエアコンの室外機になります。アパートに設置していたこのエアコンは引越しの際に工務店のかたに移設して頂きました。
自宅のエアコン室外機
コンクリートブロックの位置決め
壁に向かって左側にはエアコンダクト、向かって右側には縦樋、そして右側の灯油保管用の物置をずらしてしまうと床下の換気口を塞いでしまうため最小限の移動に限られます。
レーザー水平器を使い計測してみると、左右のコンクリートブロックの上面で約15mm高さが違っていました。雨水桝の近くということもあり水勾配の影響だと考えられます。左右ブロックの高低差をコンクリートブロックに取り付ける支柱で調整し、横フレームの上面を水平にしたことにより、45°にカットした斜材がキレイに収まりました。また、支柱の倒れがないかレーザーで確認しながら作業を行っています。
支柱の取付け高さでレベルを調整
「室外機の屋根」の完成
実家のエアコン室外機の屋根は基礎のコンクリートブロックをモルタルで固定したのですが、自宅では床がコンクリート基礎になっているためステンレスの曲げ板を使用しステンレスビスで固定しています。6.4mmのコンクリートドリルでコンクリートに穴をあけ、アンカープラグを使用しています。
自宅用 室外機のシンプルな屋根
屋根の干渉部分はカットして処理
縦樋と屋根板との干渉部では、屋根板をV字にカットすることで干渉を無くしています。また、ALC用のビスで固定している屋根の取り付け用ベース材に対してギザギザにカットした屋根板の取り付けベース板をビス止め固定しています。
それから、壁側の一番奥には屋根板を取り付けず開口部とすることで、空気の流れを阻害しないようにしています。
縦雨どいとの干渉部に「逃がし加工」
通気性がよい屋根の作り
この写真は屋根板を裏側から見た様子になります。屋根板と屋根板の間に隙間を設けていることが分かると思います。熱気がこもることを防ぐためのベンチレーション効果が期待できます。
通気性のよい室外機のシンプルな屋根
まとめ
実家で使用していたエアコン室外機用のカバー(市販品)を見たことが、室外機の屋根をDIYで製作するきっかけとなっています。アルミ蒸着マットタイプの室外機カバーのセールストークは「アルミフィルムで直射日光を遮断し、エアコン室外機の負担を減らします。エアコン室外機の天板につくほこりや汚れも防ぎます。」とあります。たしかに、室外機に直射日光が当たることを防ぐことは良いことだとは思いますが、熱のこもりや防錆を考えたときこの市販品のやり方はあまり良い対策ではないように思いす。
そこで、今回製作したエアコン室外機の屋根は、シンプルに屋根をつけることで直射日光を遮断し、空気の流れを阻害しないように室外機の正面や側面、背面には何もつけないシンプルな構造にしています。
また、さらに屋根板には隙間を設けてベンチレーション効果を期待できる構造にしています。屋根をつけることで雨水による腐食リスクを軽減できることもメリットとなることでしょう。仮に一時的に室外機が濡れたとしても、通気性が良い構造のカバーであるため室外機の乾きが早いと考えています。
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