メガネに興味がない人はこの記事を読まない方が良いと思います。時間の無駄になります。「ちょっと暇つぶしに付き合ってもいいよ」と思う人だけ読んでください。
前回、遠近両用の眼鏡の必要性について記事を書いてみましたが、まだメガネについて伝えてきれていないことがあるのではないかと思い、メガネ店勤務で身に着けたメガネの調整のコツなどを好き勝手にお話したいと思います。 R「メガネ好き」
追記、この「メガネオタクのつぶやき」中で専用工具の写真を掲載しています。しかしここではおすすめ商品として掲載していません。不慣れな方が専用工具でメガネを扱うとメガネを壊してしまう恐れがありますので、絶対にポチらないでください。
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メガネフレームについて
メガネとは
メガネはその用途として視力矯正をはじめとして、花粉症対策の専用メガネ、あるいはだてメガネ、だてメガネでもレンズ無しで使用されている方もいます。
また、ファッションとしてのサングラス、防眩のためのサングラス、アウトドア使用を目的とした偏光サングラス、或いは紫外線に反応して色が変わる調光レンズのメガネ、そして医療界の保護メガネもありますし、DIYや工業界でもよく使用するケガを防止するための保護メガネなどたくさんの種類が存在しています。
メガネの素材もいろいろとあり、合金、チタン、形状記憶合金、セルロイド、べっ甲、18金など、おそらく今はもっと新しい素材も取り入れられているでしょう。メガネはその目的に応じていろいろなデザインや素材を使ったフレーム、いろんなレンズを組み合わせて作り出す非常に個性的な逸品となります。
お店で働いていてもお客さんに教わることも多く、メガネを使用している方々はメガネに関心を持っている方が多く、まさに生活における必需品なのです。そんなメガネを長く良いコンディションで使うためのアドバイスになればうれしい限りです。
視力矯正用メガネの取り扱いについて
どんなことにも基本があります。業界では当たり前の事でも携わったことがない方にとっては新鮮な情報に感じることも少なくありません。
私はこの業界に入るまで全く知らなかったことですが、メガネ業界の方にとってはあまりにも当たり前の事について少しお話します。おそらくメガネを長らく愛用して頂いている方にとっても退屈なことかもしれません。
メガネの取り外しは必ず両手で行います。
メガネを良いコンディションで長く使っていただくには、最低限の守って頂きたいとっても大事なことがあります。映画やテレビに出てくるかっこいい俳優さんのまねをして、ついつい片手でメガネを外してしまうことがあるようですが、これではメガネが変形してしまいます。ひどい時は破損につながりかねません。
視力矯正の面から考えても良い事は一つもありません。度無しのサングラスであればさほど気にもなりませんが、視力矯正をおこなっているメガネを、フレームの変形が原因でズレ落ちたメガネをかけることは、目にとっては全く良いことはありません。
メガネはそれぞれ使う人の目の位置にレンズの焦点をあわせて加工しているため、目の位置とレンズの焦点位置がずれるとプリズムが加わったような状態になってしまうからです。ですから、メガネをずれ落ちた状態で使い続けることは、目に良くありません。
人によっては、頻繁にメガネ店でメガネの型直しを行う方もいらっしゃいますが、メガネ店で型直しを行うということは、フレームを曲げていると思って頂いた方が良いでしょう。ですから、メガネの素材も繰り返しの疲労により、徐々に破損に近づいていることを分かって頂きたい。
とは言っても、中には先天的、あるいはケガや病気等の身体的な理由により、片手でメガネを掛け外しする必要がある方もいるかもしれません。もしも、そのような場合はメガネの素材そのものに弾力性があるものを選んでいただくか、あるいはバネ丁番といってバネがメガネの蔓(ツル)の付け根に組み込んであり、バネが変形することでフレームの変形を防ぐ構造のメガネを選んでいただくことが望ましいかと思います。
メガネをしまうとき
メガネの基本として、メガネを外してメガネケースにしまう際、ツルを折る順番に決まりがあります。メガネのツルを折りたたむ時は必ず左から折りたたみます。そして右側のツルを折りたたみツルを重ねるようにします。今、説明している右左とはメガネを掛けている人の右手、左手の方を基準に説明しています。
メガネをたたむ時の順番 広げる時の順番
逆にメガネをメガネケースから取り出し、メガネを掛ける場合はまず右のツルを広げて、それから左のツルを広げて顔にメガネを掛けます。
視力矯正用メガネのフィッティングの前に知っておきたい。
フィッティングは視力矯正用メガネにおいて非常に重要なポイントになります。特にレンズの度数が強い方にとっては、レンズの焦点と目の位置のズレは非常に大きな影響を与えてしまします。基本的には目の瞳孔の位置とレンズの焦点位置が一致していることが理想です。もし、瞳孔の位置がレンズの焦点からズレるということは、視力矯正に必要な度数にさらにプリズムの作用を加算したような状態となってしまいます。
レンズはその構造上たくさんのプリズムを集めたような形になっていますので、一般的にはレンズ周辺部(正確にはレンズカーブがきつくなるとプリズムは強くなります。)に行くほどプリズムの影響を受けてしまいます。レンズ焦点の瞳孔に対する上下左右方向へのズレともう一つ大事なのが、メガネの眼前距離というものです。
つまり、メガネのレンズが角膜頂点からどれくらい離れているのか、その距離のことを言います。眼前距離の基本は12mmと決まっています。視力検査において眼前距離12mmでレンズを調整しますので、実際に使用するメガネはレンズと角膜頂点の距離が左右ともに12mmとなるようにあわせることが重要になります。
言葉で言うのは簡単なのですが、実はこの調整をしっかりと行える人はあまり多くないかも知れません。もちろん熟練の方も多くいるのでしょうが、経験の浅い方にとっては非常に難易度の高いスキルになります。
私個人の見解としては、おそらく、そのメガネ店のレベルを知る大きなポイントといっても過言ではないと思います。ちょっとこのポイントを話し出すと長くなってしまうのですが、私が考える理想のフィッティングにつて簡単にまとめてみたいと思います。
まずは、顔の特徴を捉えることが大事になります。
❶ 人の体のつくりは基本的には左右対称となっていますが、あくまで基本的にはということ。
❷ 顔をよく見るとその作りは左右対称とは言い難いのです。目の高さが左右で違う方、あるいは目の位置が左右同じ距離にあるとはかぎりません。また、耳の高さが左右で違うこともよくありますので注意深い観察が必要になります。
❸ そして、一番見落としてしまうのが、顔を輪切りにした時の断面形状。つまり、メガネを掛けている状態でその様子を上からしっかり観察したとき、顔がきれいに左右対称となっている方は案外少ないものです。
❹ つまりメガネを左右、上下に均等に作って調整すると仕上がりとしては一見きれいなのですが、そのメガネが必ずしも掛け心地が良い眼鏡とはならないことが多いのです。もし仮に、そのメガネをかける人の顔が完璧に左右対称であればよいのですが、そんな方はまず居ないと思っていた方がよいと思います。
顔に歪みが無いときはメガネをスクエアに
上の絵は人の顔を上から見た状態です。このように顔の歪みが無く左右対称なケースな意外と少ないものです。このような顔の方にはメガネは左のようにスクエアに調整し、左右対称にします。
顔に歪みがあるとき、顔の歪みにメガネを合わせる
このような顔に歪みがあるケースは結構多いかと思います。長年お客の顔を観察して思うのですが、顔は極端な言い方をすると、平行四辺形のような形状だと考えています。最初は、どうしてメガネから耳までの距離が左右で違うのだろうと思っていたのですが、実はそうではなくてメガネと顔面(正確には目)との距離が左右で違っていたのです。
乳幼児で頭蓋骨がまだ柔らかい時に、どの様な体制で過ごすかにより頭蓋骨の形状、顔の骨格が決まるのであろうと考えらえますが、その頭蓋骨の歪みにフレームの歪みも合わせるとメガネとレンズとの距離は左右で同じになるし、ツル(耳に掛ける部分、メガネの部品)の長さもほとんど同じになることが多い事に気づきました。
このことは、数多くの接客から得た気づきの一つです。つまり、基本的には頬骨から耳までの距離は左右ほとんど同じであり、顔の歪みにより見かけ上のメガネから耳までの距離が違って見えただけであると。ですから、顔に対するメガネの角度を最初にあわせることは大変重要です。
フィッティングはフレーム選びから始まっています。
「使いやすいメガネを手に入れる」ためのメガネづくりの工程は、レンズを入れる前であるフレーム選びの段階から、すでにスタートしています。そのため、ほとんどのメガネ店では検眼から接客をスタートさせます。これはもちろん経営面を考えて、店の回転率をアップさせることを考えると一番効率がよいのはありますが、実はそれ以上に、お客にとって使いやすいメガネをつくるために、一番理想的なのです。
特に視力矯正を主目的に考えたメガネでは、とても理にかなった流れとなります。この項の最初にお話したように、レンズの焦点位置と目の瞳孔位置との関係はレンズの度数が強くなるに従い、とても重要になります。いくらお客がこのフレームが気に入ったといっても、お客の目の状態によっては、おすすめできないものがあるのです。
よくあるパターンですが、特に強度近視(S-6.00以上)のかたですと、レンズがどうしても厚くなってしまいます。そこで、ある程度の強度近視の方はメタルフレームよりもフレームの作りが骨太となっているセルフレーム(樹脂フレーム)を選ぶ方が結構多いようです。
ところが、ちょっと注意して頂きたいのことがあります。このセルフレームはメタルフレームと違い、鼻当て部分の調整が不可能なため、あとで調整しようとしてもうまく調整できないのです。鼻が高い方であればさほど問題ないのですが、そんなに鼻が高くない人がセルフレームを選んでしまうと、耳の後ろで無理やり引掛けるようにしてメガネがズレないようにすることになってしまいます。
または、鼻盛りと言ってシリコンのシールタイプのパッドをメガネフレームに貼り付けることがあるのですが、この鼻盛りはどうしても剥がれることがあるし、使ってくると皮脂で滑りやすくなってきます。
そのメガネのズレ落ちこそが、目にとって悪影響を与えてしまいます。近視の場合ですと、レンズ焦点から外に行くほどプリズム効果で度が強くなっていきます。つまり、メガネがズレ落ちた状態でメガネを使用していると、無意識にレンズの度が強よすぎる部分で見てしまっていることになります。つまり、近視の度をすすめてしまう結果となってしまいます。
ところで、メガネを使っている多くの人は、メガネの左右の傾きに比較的敏感なようです。なぜなら、メガネを掛けてる状態で軽く視線を上げると、メガネのラインが見えてしまうからかと思います。基本的にはメガネを掛けた状態でメガネが水平を保っていることは理想的な状態といえます。ただし、人の顔はさまざまであり、眉の高さがかなり違っている人がいれば、あるいは目の高さが明らかに左右で違う人もいます。
場合によっては目の位置にレンズ焦点を合わせることもあるでしょう。(人によっては見やすい位置にレンズが来るように自分でフレームを合わせてしまう人もいるからです。)つまり、メガネを左右対称に作って後からメガネを横にずらして使う人がいるということです。
このようなことも考えると、やはりメガネのレンズを削る前にフレームのフィッティングをしっかりして、それでも目の位置がずれる時はレンズの焦点位置の調整も選択肢に入れるべきだと考えます。なぜなら、お客は見えずらかったらメガネ店に何度も来店して調整をしてもらうか、あるいは自分でいろいろ試して見やすい位置を探し出すことになるからです。
フィッティングの手順 基本は中から外へ順番に調整します。
Step 1 顔の骨格にメガネの角度を合わせる。
フィッティングは椅子に座っている客の顔をやや上から見下ろして、頬骨の状態を観察するところからスタートします。右の頬骨、若しくは左の頬骨が出ているか、それとも左右の頬骨は同じぐらいの出具合であるかを見ます。この頬骨の観察で顔の骨格が左右均等な形状(非常にまれ)か、あるいは左が張り出した形状か、若しくは右が張り出した形状なのかを判断します。
それでは、まずは下の例をご覧いただきたいと思います。いずれも悪い例としています。まずは左の例ですが、これはメガネをぶつけたときなどにもちょうどこのような状態になってしまうのですが、ここでは顔の骨格の歪みがある時とない時を比較したものになります。
左図は顔の歪みが無い場合、右図は顔の歪みがある場合なのですが、メガネの形状の組み合わせが良くありません。左図のように歪みのない顔にはメガネも歪みが無くスクエアなものが顔にフィットします。逆に、右図のように歪みのある顔にはメガネもスクエアではなく顔の歪みにフレームの歪みを合わせなくては顔にメガネがフィットしません。
顔の歪みにフレームの歪みを合わせる 悪い例
次の例はいずれも良い組み合わせになります。まずは左図の歪みのない顔の場合ですが、メガネを左右均等なスクエアな形状のメガネが顔にフィットします。
そして、右図のような歪みのある顔に対しては、顔の歪み角にメガネの歪み角を合わせることでレンズと角膜頂点との距離(眼前距離)を左右等しくすることができます。
なおかつ、顔へのフィット感も向上します。理想の眼前距離は12mmです。正しいフィッティングを行う事の第一目的は左右均等な眼前距離を保つことです。そして掛け心地をよくすることです。
顔の歪みにフレームの歪みを合わせる 良い例
それでは、これから具体的なフィッティングを始めます。メタルフレームの場合、まずは智の部分を「テンプル用やっとこ」を使い調整します。下図の例ではメガネをかけてもらったときに客の右手側のレンズと右目の距離が離れていてメガネと顔の間の隙間が「広く」なっています。
このような場合、目とメガネの隙間が「広い方」のテンプル(ツル)を「広く」します。
目とメガネの隙間が「狭い方」のテンプルを「狭く」します。
メタルフレームの場合、フレームの調整は常温で行います。Nishimuraの「テンプル用やっとこ」という工具を使って金属の「塑性変形」をおこないます。
つまり、簡単に言うと力技なのです。ですからあまり繰り返し塑性変形を繰り返すと金属疲労によりフレームは破損してしまいます。
そして、調整の程度が極端にひどくない限りはレンズをフレームに組み込んだ状態で調整を行います。ただし、ガラスレンズの場合はとくにプラスレンズ(凸レンズ)の場合はいったんレンズを取り外してからフレームの調整を行ったほうが良いこともあります。
なぜかと言いますと、メガネの調整は先ほども申したように「力技」なので、ガラスレンズではフレームの変形を戻すために「テンプル用やっとこ」握った手を力んだときに、レンズを破損してしまう恐れがあるから慎重に行わなければいけません。
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メガネオタク情報
テンプル用やっとこと言って上図のテンプルの開き調整に使用。工具の円錐部をテンプルの内側に、樹脂部をテンプルの外側にしてテンプルをしっかり挟んで開いたり、狭くしたりします。 |
フィッティングの基本 智の角度で眼前距離を調整
セルフレーム(プラスチックフレームの総称。かつてセルロイドが多かったが、現在はアセテートが主流)の場合は智のところをヒーターで温めでからフレームを変形させてから水で冷やして望みの形状に調整していきます。
一般にレンズのほとんどがプラスチック(ガラスレンズを使用している方は非常にまれ)を使用しているのですが、レンズの表面に「マルチコート」といって金属の酸化膜をコーティングしています。
そのため、レンズに熱を加えるとレンズの劣化を招く恐があります。なぜかと言いますと、レンズ本体のプラスチックと反射防止の金属膜では熱膨張率が違うからです。
金属膜よりもプラスチックの方がより膨張しますので、プラスチックの膨張についていけない反射防止の金属膜にヒビが入り、やがコーティングが剥がれてしまうのです。
セルフレームの智の調整では、フレームを十分に加熱する必要があるため、まずはプラスチックレンズをセリートでしっかりカバーした状態でフレームをヒーターにあて、軽くあぶりフレームをある程度柔らかくしてから、レンズを外します。
レンズを外す際は、レンズの左右上下を間違わないように管理し下さい。レンズを外すとレンズを傷める心配がなくなりますので、フレームを十分に加熱できますが、熱しすぎないように注意してください。
DAICEL(ダイセルファインケム株式会社)の資料によると、アセテートの熱変形温度は60~70℃とあります。店で働いているときはいちいち温度を計測することはありませんでしたが、加熱するにつれ柔らかくなってくる感覚で作業を行っていました。慣れていないと結構熱いと感じる温度かもしれません。お風呂のお湯よりかなり高めの温度ですよね。
Step 2 メガネを正面からみて水平になるように調整する。
視力矯正用メガネでは、レンズの焦点と目の位置関係はとても重要です。基本としてはstep1で目とレンズの距離を左右均等にします。
理想としてはレンズと角膜頂点までの距離は12mmですね。今度は顔を正面から見てフレームが水平の状態が理想となります。
フィッティングの基本 正面からみてメガネは水平が理想
ところで、メガネを掛けたときにメガネが傾いている人をご覧になったことがあるのではないでしょうか。
メガネが傾く原因としては2つ考えられます。一つは下図の右上のようにフレームは変形していないのに何故かメガネが傾く場合は、左右の耳の高さが違うことが考えられます。
もう一つのメガネが傾く原因はフレームの変形です。左右の耳の高さは同じなのに、フレームのツルが変形したことによりメガネが傾むいてしまうケースがあります。
メガネが傾く原因 「耳の高さが違う」と「フレームの変形」
それではメガネが上図のように傾いた場合は調整が必要なのですが、先ずは右上のケースではメガネを掛けた人の耳の高さが左右で違い、メガネを掛けた人の右手側の耳が高いので、この場合は右側のツルを上に上げる(もしくは下がっている左手側のツルを下げる)、つまりわざとフレームを変形させることによりメガネをかけた状態で水平になるようにします。
次に左下のケースでは左右の耳の高さが同じなのにもかかわらずメガネが傾いています。このようにメガネの変形が原因によるメガネの傾きの場合は、工具を使ってメガネの変形を元に戻します。
たとえば、下図の下段のようにメガネを掛けている人の左腕の方のツル(水色)が下がっている場合は、下がった左側のツルを元の位置に戻します。
フィッティングの基本 変形したツルを戻す
フレームの変形をチェックする際は、メガネを平らなテーブルや机の上に上下逆さまの状態に置きます。すると下図のように大変確認がしやすくなります。
フレームの変形もなくツルの高さが左右同じであれば、下図の上段のように左右のテンプルがきれいにテーブルに密着します。もし仮にフレームに変形がある場合は下図の下段のように変形したテンプル(水色)が浮き上がってしまいます。
フィッティングの基本 メガネを裏返してツルの高さを確認
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メガネオタク情報
このやっとこは先端にフラットな樹脂がついていてフレームにキズがつきにくい万能やっとこですが、おもにツルの上下方向の変形を調整するときに使用します。 |
この時にあわせて確認して頂きたいのは鼻パットの当たり具合です。
フィッティングの基本【良い例】 鼻パットが鼻の傾斜になじむ
フィッティングの基本【悪い例】 鼻パットが鼻に刺さる状態
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メガネオタク情報
このやっとこは鼻パットをつかんでパットの角度を変えるときに使います。鼻パット取り付け部をきれいホールドできるため安定した調整ができます。 |
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メガネオタク情報
鼻パットを固定している部品をクリングスと言います。このやっとこは複雑に曲がりくねった形の金属のクリングスを変形させるときに使用します。特に鼻パットの高さを変える時などには非常に便利です。 |
Step 3 メガネのツルの曲げる位置を耳に合わせる。
最後にツルを調整します。メガネのツルは先端の方で曲げているので曲げた部分を耳に引掛けていると思っている人が多いかも知れません。実際は引掛けていると言うよりは、「メガネが頭に抱きついた」状態をイメージしてフィッティングした方がメガネがズレ落ちにくく、しかも耳まわりへの負担が少なくて済みます。
フィッティングの基本 ツルは耳の位置に合わせて曲げる
ステップ1でメガネの角度を骨格の角度に合わせましたが、それでもツルの曲がっている位置は誰にでも合っているわけではありません。頭の骨格の大きさは人それぞれ違います。
メガネのツルはおおよそ標準と考えれるところで曲げていますので、使う人にあわせて曲げる位置を調整する必要があります。
その際、まずヒーターでツルの曲がっている部分を十分に温めてから一度まっすぐに伸ばしてしまいます。それからメガネを使う方の耳の位置に合わせて下方に曲げます。その時のコツとしては、耳の頂点よりやや後方で下に曲げ、なお且つ内側に曲げていきます。これはあくまで基本の形です。
フィッティングの基本 ツルは一度まっすぐに伸ばしてから曲げる
冒頭でお話したように人の骨格は、各人それぞれ違った形状をしていますので、骨格の形状の特徴をしっかり観察してフレーム全体で「メガネが頭に抱きついた」形にします。
人によってはツルの先端を内側に曲げると、ツルの先端が頭に突き刺さってしまう骨格の形状の方もいますので、そのようなケースでは骨格の形状に馴染ませ先端は外に逃がすほうが良い場合もありますので、メガネを使う方の骨格をよく観察したほうがよいと思います。
私たちの店舗ではお客に了解を得てから、髪を上げて頂き、ツルの当たり具合を必ず確認していました。おざなりのワンパターンの形状でフィッティングを終わらせないようにすることで随分とメガネを快適にお使いいただけます。
フィッティングの基本 ツルは頭の形状になじませる
メガネの構造 (2020年5月購入の遠近両用メガネにて紹介)
フロント ブリッジ
レンズが入っているところがフロント、レンズ部をつないでいる中央部をブリッジと呼びます。
メガネ各部の名称:「 フロント 」
智(ち)
フロントとツルをつなぐ部分を智と呼びます。
メガネ各部の名称:「 智 」
鼻パット
鼻が当たる部分を鼻パットと呼びます。メガネのズレ落ちが気になる人はシリコン製の鼻パットを使うと効果的です。
メガネ各部の名称:「 鼻パット 」
クリングス
フロント部から伸びている鼻パットを支える曲がった腕をクリングスと呼びます。
メガネ各部の名称:「 クリングス 」
ツル(テンプル)
智から伸びた耳に掛けるパーツをツルと呼びます。
メガネ各部の名称:「 ツル 」
先セル
ツル(テンプル)の先端に差し込んである樹脂を先セルと呼びます。
メガネ各部の名称:「 先セル 」
マイメガネコレクション
こちらは、遠近両用メガネを使いだす前に使っていたメガネです。これらのほとんどのフレームが遠近として使用するにはレンズが小さくて不向きなため現在は使用していません。
メガネのマイコレクション
歴代No.1のお気に入り
これまで使ったメガネのなかで歴代No.1のお気に入り。メガネ店で働いていたので、メガネは贅沢していました。預金が増えなかった要因の一つでもありますね。
ブランドはGUCCIです。メガネはたくさん持っていても結局気に入ったものしか使わなくなります。お気に入りですから、たくさん使っているのですが、フレームのメッキが全く痛んでいません。
普通、ヘービーユースのメガネはメッキが痛むことが多いのですが、やはり名前だけではないようです。ちなみにこのサイズのレンズであれば小型の遠近作れますよ。(現在一番初期の遠近レンズが入っています。)
GUCCI フチなし
歴代No.2のお気に入り
こちらは歴代お気に入りNo.2 こちらもGUCCIです。このメッキのタフさは特筆ものです。しかも大変軽くて飽きのこないデザインだと思います。(現在は「近々レンズ」を入れて職場での近距離で特殊作業にのみ使用しています。近々レンズは遠近よりも手元の視野が広いのですが、遠くは見えません。)
GUCCI フルメタル
歴代N0.3のお気に入り
こちらは歴代お気に入りN0.3 ブランドはローデンストックといってドイツの有名ブランドです。こちらはかなり個性的な小さなレンズサイズのメガネとなります。横長のデザインのお陰で小ぶりのレンズの割には意外と視野は広いと思います。
個性的なメガネはメンテナンスがちょっと難があります。ご覧のように鼻パットの形状が特殊なため一度も交換していません。わざわざ鼻パットを取り寄せることをためらいます。
結果として鼻パットがかなり汚れていますね。第三者からみると不潔な感じがして不快感を与えてしまいますね。
RODENSTOCK フルメタル
こちらはノンブランドの中で唯一私のこころをガッツリつかんだフレームです。形状も作りも一癖ありますが、掛けてみるとそこまで違和感がなく、フチなしと違いレンズの内側にボルトがありませんので、視界もスッキリしています。
ノンブランド ナイロール
まとめ
こちらの記事はメガネに興味がある方限定としています。メガネの情報を欲しい方には僅かながらお役にたつのではないかと思っています。そのなかでも、どちらかというとメガネ店で働く新人さん向けのような気がします。
私がメガネ店で働くなかで、教わったこと、自分で集めた知識、たくさんの接客の中で気づいてきた学びをあくまで私の個人的解釈でまとめたものです。異論を唱えるかたもあるでしょうが、実際にお客さんをアフターフォローしながら検証してきた内容です。
しかし、本当にお客に喜んでもらえるレベルになるにはかなり熟練をようすると思います。成長の過程ではフレームを壊してしまう事もあるでしょう。私もべっ甲のフレームを壊して修理に出したり、ロウ付けが外れて手直ししたり、テンプルだけを保証で取り寄せたりしました。
もしかしたら、挑戦しないで「事なかれ主義」でやり過ごす事も賢いやり方なのかもしれません。しかし、それではフィッティングレベルが上がることは無いでしょう。いつの日か、他店で購入したメガネのフィッティングをお客から頼まれるほど「頼りにされる存在」になって頂きたいと願っています。
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