家の熱の出入りにかんする国土交通省のデータによると、冬場では家全体から逃げる熱の58%にもおよぶ量が窓などの開口部から失っていることが報告されています。また、夏場では家全体に入ってくる熱の実に73%もの量が窓などの開口部から侵入しているとのことです。
これって、かなり衝撃的な数字だと思いませんか? 私は、この事実を突きつけられてからというもの、家で快適に暮らすには窓の断熱対策を行うことが重要であることを強く刷り込まれてしまいました。
その後、コツコツと窓の断熱効果を高めるための対策を行ってきて、ようやく寝室の二重窓化が完了しました。部屋に統一感を持たせることも意識はしていたのですが、使い勝手を意識して選んだのはプラマードU。
結果として、暖房の効きが良くなり、部屋のあったかさがまるで違うことを実感し非常に満足しています。しかし、この寝室に取り付けられた二つのプラマードは大きさがまるで違うので、「はたしてどちらのプラマードの貢献度が高いの?」そんな素朴な疑問を持ったことから断熱効果を比較してみることにしました。
仮説:窓が大きくなると「外気に奪われる熱エネルギー」は増えるはずなのだが! 実際どうなの?
実際の窓まわりにおける熱の伝わり方というのは、サッシ窓にアルミフレームや、樹脂フレーム、ガラス、ポリカーボネートなどいろんな素材が使用されているし、またフレームの形状も中空タイプがほとんどであり、計算が複雑になってしまいます。
そこで、ここでは内窓のつくりをシンプルな形に置き換え、内窓の構成が面材(ガラスなど)とフレーム素材の板枠という設定にすることで、簡素にモデル化して考えることにしたいと思います。
つまり、面材の素材とフレームを樹脂の板と考えるようにして、それぞれの材料による熱の伝わりやすさを表す熱伝導率[W/m・K]と熱通過率[W/(㎡・K)] という数字をみることで、内窓の断熱に関する大まかな性能を知ることができるというわけです。
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熱工学において、温度差により熱エネルギーが移動することを伝熱といいます。そして、伝熱を次の3つに分類しています。
・伝導伝熱・・・物体内部に温度差があると、高温部から低温部へと熱の流れが生じます。
・対流熱伝熱・・・温度の異なる個体壁面と流体の間では、ふく射と流れによる熱の移動が同時に起こります。
・ふく射伝熱・・・その温度に応じて持っている内部エネルギーを、電磁波の形で放射します。
物体内の単位面積を単位時間に伝わる熱量(熱流束)をq[W/㎡]は熱の流れる方向の温度勾配dT/dxに比例し
q=ーk・(dT/dx) ・・・フーリエの法則
式中の「比例定数 k [W/(m・K)]」を熱伝導率と呼びます。
たとえば、ガラスのような平板(ある物質内)を熱が伝わる場合、
ガラスの厚さ:L
ガラス板の両面の温度:T₁、T₂
熱が通過するガラスの面積:A
フーリエの公式を適用すると、広さAのガラス板を通って単位時間に流れる熱量は
Q=( k・A )( T₁ー T₂ ) / L と表されます。 ( k : 熱伝導率 )
しかし、内窓の断熱性能について考える時、実際にはサッシの面材(ガラスなど)は触れている空気(流体)を介して熱をもらっているため、室内の空気と内窓、内窓と外窓の間の空間、外窓と外気、あるいは複層ガラスの中間層の空間では対流伝熱として取扱います。
表面温度Twの個体壁が温度T₁の流体に触れているとき、熱の流れは温度差(T₁ーTw)によって引き起こされると考えられ熱流束qを q= h(T₁ーTw) と表し、h[W/(m²・K)]は熱伝達率と呼びます。
熱通過(個体壁の両側に流体があり、温度差があれば熱は壁を通過して流れる)
熱通過において、壁と流体間での対流熱伝達と、壁の内部での伝導伝熱とが同時におこっています。このとき、壁の面積を A 、両側の流体の温度差 (T₁ーT₂) を駆動力とする熱の流れと考えて
Q = K A (T₁ーT₂)
とあらわすとき、係数 K [W/(㎡・K)] を熱通過率と呼びます。
ガラス(固体)の熱伝導率をk、ガラス(固体)の厚みを L 、流体1(あったかい空気)の熱伝達率をh₁ 、流体2(冷たい空気)の熱伝達率をh₂ としたとき、K は次のように表すことができます。
1/K = 1/h₁ + L/k + 1/h₂
熱伝導率は物質の温度により変動します。
アルミの温度と熱伝導率 | |
温度[K] (℃) | 熱伝導率 [ w/(m・K) ] |
150 (約-123℃) | 248 |
300 ( 約26℃ ) | 237 |
600 (約326℃) | 232 |
800 (約526℃) | 220 |
※金属は温度が上がると、熱伝導率は小さくなる。
空気の温度と熱伝導率(大気圧下) | |
温度(℃) | 熱伝導率 [ w/(m・K) ] |
‐50℃ | 20.26 |
0℃ | 24.21 |
100℃ | 31.45 |
200℃ | 38.03 |
300℃ | 44.15 |
※気体は温度が上がると、熱伝達率は大きくなる。
熱が伝わりやすい材料と熱が伝わりにくい材料の一例
機械実用便覧より
熱伝導率の値が大きいほど・・・「熱は伝わりやすい」
熱が伝わりやすい材料 | |
物質名 | 熱伝導率 [W/m・K] |
約27℃(300Kでの値) | |
銀 | 427 |
銅 | 398 |
金 | 315 |
アルミ二ウム | 237 |
鉄 | 80.3 |
SUS304(ステンレス) | 16 |
絶対温度から摂氏温度へ変換するとき
Tc[℃] = T[K] ー 273.15
機械実用便覧より
熱伝導率の値が小さいほど・・・「熱は伝わりにくい」
熱が伝わりにくい材料 | |
物質名 | 熱伝導率 [W/m・K] |
約27℃(300Kでの値) | |
コンクリート | ※1.2 |
陶器 | 1.0~1.6 |
ソーダガラス | 1.03 |
エポキシ樹脂 | 0.3 |
ラワン(木材) | 0.085 |
※293K(約20℃)での値
熱が伝わりにくい材料 | |
物質名 | 熱伝導率 [W/m・K] |
ポリカーボネート | 0.235 AGC技術データより引用 |
近年は、住宅の断熱性能を高めるために外窓用の樹脂製サッシの導入がはじまっています。窓から侵入する冷気などを抑えるにはサッシの面材の工夫だけでなく、サッシのフレームの材質にも注目されています。
樹脂製サッシは熱を伝えにくいという特性があるため住宅の断熱効果を高めるには効果的な素材といえます。いっぽう、従来からあるアルミフレームに比べると紫外線等による劣化が懸念されるため、耐久性の面で課題があると言えそうです。
簡易モデルによる計算にて 大・小 のプラマードを比較検証してみる。
ここでは、温度の計測結果の検証としてシンプルな計算モデルと理論式から内窓を通過する熱量を求めて比較してみます。
内窓の断熱効果を示す指標として、最も一般的なものは熱貫流率というものです。日本サッシ協会がまとめた熱貫流率Kの早見表があります。窓の断熱工事を比較検討されているかたにとって非常に便利なものとなっています。(※ちなみに、熱貫流率の値が小さいほど、窓の断熱効果が高くなります。)
興味がある方はこちらをどうぞ
日本サッシ協会 二重窓の熱貫流率について
簡易的な計算モデルをつくる
私は愛用している日本機械学会の機械実用便覧の資料をもとに計算を行っています。用語についても、機械実用便覧にあわせています。
現在、サッシメーカー等で使用されている「熱貫流率」[ W/(㎡・K) ]と機械実用便覧で使用されている「熱通過率」[ W/(㎡・K) ] は使用する単位が同じであることから同義と捉えています。(ネット上でも別の呼び方として紹介しているようです。)
JIS日本工業規格にても細かな計算方法があるのですが、煩雑であるため大まかな窓の断熱効果を知るための簡易モデルをつくってみました。
殆どのサッシフレームは下図右側にあるイラストのように、フレームの中はくり抜かれたような形状となっています。この時、空気中の熱は一度フレームの壁を伝わり、フレームの中に移動します。次にもう一つの壁を伝わってフレームの外に抜けるように熱が移動しています。
これだと、熱通過率を2度計算することになるのですが、残念ながらフレーム内部の温度は把握できません。
そこで、樹脂内窓フレームの厚みをCADデータで確認すると約2mmなので、左側の簡易的な計算モデルでは、下図左のイラストのようにフレームの壁2枚分をまとめて4mmの板に置き換えています。
本来であれば、フレーム内に入った熱はフレーム断面の上側と下側からも逃げていると思われます。この簡易計算モデルではフレームの上下から逃げる熱を無視しています。
簡易的な計算モデルの考え方
プラマードの比較に使う計算モデルの設定温度の考え方
熱通過率を求める時、ガラスを取り巻く空気の熱伝達率が必要になります。その空気の熱伝達率は気温により変化するため、実際の温度計測結果の値を参考にしてみました。
軽く暖房を使用しているとき、寝室の温度は24℃くらいで安定してきます。外気温が5℃くらいの時、内窓と外窓の空間温度は約11℃であることから、計算モデルに使用する空気の熱伝達率は気温24℃、11℃、5℃にて求めています。
計算モデル化で使用している設定温度(温度計測値をもとに)
熱伝導率と熱通過率の計算データ
熱伝導率と熱通過の計算データ
大・小 プラマードUによる断熱効果の比較 計算モデルより
ネット上でみる熱通過率とは違う値になります。ネット上に公開されている熱通過率の数値は外窓と内窓をセットにした実装に即した値になったものがほとんどです。
しかし、ここでは計算を簡素化するため外窓を計算の対象とはしていません。あくまで、比較を目的としているため、共通部分である外窓(我が家の外窓サッシはすべて単板3mmの窓を使用していて同一であるため。)は計算から除外しています。
計算モデルから求めた熱通過率 | ||
2F寝室の内窓比較 | 出窓(小)プラマード | 掃き出し窓(大)プラマード |
ガラス | 単板 3mm ガラス | 単板 5mm ガラス |
ガラスの熱通過率[W/(㎡・K)] | 12.3 | 12 |
樹脂フレームの熱通過率[W/(㎡・K)] | 10.2 | 10.2 |
窓枠の全体の熱通過率[W/(㎡・K)] | 11.8 | 11.6 |
熱通過(W=J/sec) | 244W | 486W |
上記の表にあるように、熱通過率はガラスの厚みの影響がわずかにあるようです。理論上ではガラス単品のみでの熱の伝わりはガラスの厚みの影響が大きく、ガラスの厚みが2倍になれば、ガラス内を伝わる熱量は半分になります。
しかし、ガラスの両面に接している空気(流体)を介して熱を伝える時は熱通過率W=12.3(3mmガラス)、W=12(5mmガラス)とガラスの厚みの影響はそれほど大きくないことが分かります。
いっぽう、ガラスを通過する熱量は面積の影響が大きく、出窓のプラマードよりも、掃出し窓のプラマードは約二倍の熱量が通過することが分かります。
寝室に取り付けたプラマードとは
下イラストは寝室のモデル図となります。内窓プラマードUを取付けた寝室はたたみ6畳と板の間(下イラストの左側の窪み部分)からなっており、天井までの高さは約2400mmといったところです。
出窓に取り付けたプラマードとは
2017年に購入したYKKapプラマードUは、下イラストの右側に見える出窓の一番内側(右側の黄緑色の部分)に取り付けています。
サイズは 幅:1806mm 高さ:877mm になります。
ガラス単板 透明 3mm の一番スタンダードモデルになります。
掃き出し窓に取り付けたプラマードとは
2022年に購入したYKKapプラマードUは、上イラストの左側にベランダの出入り口となっている掃き出し窓(左側の黄緑色の部分)に取り付けています。
サイズは 幅:1803mm 高さ:1783mm
ガラス単板 透明 5mm スタンダードモデルよりガラス板の厚みを少し厚いものを選んでいます。
内窓の断熱効果を比較するために行った温度計測とは
寝室の暖房パターンと温度計測の方法は、前回大きな窓にYKKapプラマードUを取付けた時の温度計測と同じ方法で行っています。
寝室での暖房器具の使用状況として、エアコンで室内全体を温め、足元をファンヒーターで温めるような暖房の使い方をしています。
暖房器具の使用状況 | ||
暖房器具の設定温度 | ||
エアコン | 通常 | 20℃ |
※外気温度0℃~-2℃ | 24℃ | |
追加データ計測時 | ||
ファンヒーター設定温度 ( Lo12~30Hi ) | 通常 | Lo ~12℃ |
※外気温度0℃~-2℃ | 20℃ | |
追加データ計測時 |
掃き出し窓にプラマードを取付けた時に最初に計測した温度データはこちらから
YKKapプラマードUの断熱効果はどれくらい? 大きな窓で温度計測してみたら
温度計測する日の暖房パターンと温度計測パターン
暖房パターン | ||
タイムスケジュール | 設定温度 | |
エアコン | ファンヒーター | |
19:00~23:00 エアコンをつける | 20℃ | OFF |
20:00~23:00 ファンヒーターをつける | 20℃※ | Lo~12℃※ |
23:00 | OFF | OFF |
※室温がエアコンの設定温度より高い理由
寝室のファンヒーターは旧式のため、リビングでつかっているモデルのように設定温度をオーバーしたらオートストップし、温度が下がったらオート点火するような制御機能がありません。そのため、【設定温度:Lo】にしていても寝室の温度は24℃くらいまで上がるようです。
温度計の設置場所と計測パターン | ||
時刻 | 内窓ー外窓 空間の温度計 | 寝室内温度計 |
18:00 | 温度計を内窓~外窓の空間にセット | 温度計をチェスト(高さ1100mm)の上 |
温度計測パターン | ||
19:00 | 19:00くらいからエアコンを入れます。(ファンヒーターは入室後) | |
20:00 | 約1時間経過すると、室内温度は18~19℃くらいになっています。 | |
23:00 | 室内用の温度計を撮影用スタンド(高さ300mm)に移して撮影 | |
就寝前に、温度計をチェスト(高さ1100mm)の上へ移動 | ||
5:30 | 室内用の温度計を撮影用スタンド(高さ300mm)に移して撮影 |
大きさが違うプラマードUの断熱効果に違いはあるの?
異なるサイズのプラマードUが寝室に取りけられているのですが、はたして、窓の大きさは断熱効果に違いをもたらすのでしょうか?興味が沸いてきます。
シンプルな計算モデルの比較では通過する熱量から考えると大きな窓の方が不利のようにも思えますが、小さいプラマードUはガラス板の厚みが3mmと薄いため熱通過率ではわずかに不利になっています。しかも取付けている窓は出窓(放熱面積が広い)となっていること、温度が下がりやすい不利な条件となっています。それゆえ、実際のところどちらが勝ってるのか分かりません。さあ実験してみましょう。
就寝前~起床後 出窓と掃き出し窓「内窓~外窓の空間温度」と「室内温度」 2022.12.20
2022.12.20 23:00 就寝前 外気温度 4.1℃
掃き出し窓「内窓~外窓の空間温度」と「室内温度」12月20日 23時
出窓 「内窓~外窓の空間温度」12月20日 23時
2022.12.21 5:30 起床後 外気温度 6.4℃
掃き出し窓「内窓~外窓の空間温度」と「室内温度」12月21日 5時半
出窓 「内窓~外窓の空間温度」12月21日 5時半
2023.01.28追加更新データ(旧グラフとの違い比較)はこちら
【大】vs【小】プラマードU 温度計測データから断熱効果を比べてみる
データの集計 大・小 プラマードUの断熱効果を調べてみた
温度計測データ | |||
12月20日~21日 | 12月21日~22日 | 12月22日~23日 | |
外気温度 23:00 | 4.1 | 7.9 | 2.3 |
寝室温度 23:00 | 24.0 | 23.8 | 23.1 |
掃出23:00【内~外】 | 10.9 | 11.9 | 9.4 |
出窓23:00【内~外】 | 10.8 | 12.2 | 8.6 |
外気温度 5:30 | 6.4 | 7.2 | ※2.2 |
寝室温度 5:30 | 13.2 | 13.7 | 11.4 |
掃出5:30【内~外】 | 8.9 | 9.7 | 5.3 |
出窓5:30【内~外】 | 7.9 | 9.2 | 4.5 |
外気温度の変化 | 2.3 | -0.7 | -0.1 |
寝室温度の変化 | -10.8 | -10.1 | -11.7 |
掃出【内~外】℃変化 | -2.0 | -2.2 | -4.1 |
出窓【内~外】℃変化 | -2.9 | -3.0 | -4.1 |
掃出 【寝室】-【内~外】の温度差 | 4.3 | 4.0 | 6.1 |
出窓 【寝室】-【内~外】の温度差 | 5.3 | 4.5 | 6.9 |
※気象庁データベースより
温度計測データ | |||
12月24日~25日 | 12月25日~26日 | 12月26日~27日 | |
外気温度 23:00 | 1.8 | 3.7 | 5.0 |
寝室温度 23:00 | 24.1 | 24.0 | 24.1 |
掃出23:00【内~外】 | 9.1 | 10.9 | 10.5 |
出窓23:00【内~外】 | 9.3 | 10.8 | 10.4 |
外気温度 5:30 | 5.6 | 1.5 | 2.5 |
寝室温度 5:30 | 12.3 | 12.4 | 12.1 |
掃出5:30【内~外】 | 6.9 | 5.0 | 5.3 |
出窓5:30【内~外】 | 6.6 | 4.4 | 5.0 |
外気温度の変化 | 3.8 | -2.2 | -2.5 |
寝室温度の変化 | -11.8 | -11.6 | -12.0 |
掃出【内~外】℃変化 | -2.2 | -2.2 | -5.2 |
出窓【内~外】℃変化 | -2.7 | -2.7 | -5.4 |
掃出 【寝室】-【内~外】 温度差 | 5.4 | 7.4 | 6.8 |
出窓 【寝室】-【内~外】 温度差 | 5.7 | 8 | 7.1 |
温度計測データ | |||
12月27日~28日 | 1月24日~25日 | 1月25日~26日 | |
外気温度 23:00 | ※4.5 | -2.2 | 0 |
寝室温度 23:00 | 23.5 | 24.3 | 24.4 |
掃出23:00【内~外】 | 9.9 | 6.5 | 7.4 |
出窓23:00【内~外】 | 10.1 | 5.9 | 8.1 |
外気温度 5:30 | 3.6 | -2.0 | 0.6 |
寝室温度 5:30 | 11.9 | 9.9 | 10.3 |
掃出5:30【内~外】 | 4.8 | 2.2 | 4.1 |
出窓5:30【内~外】 | 4.7 | 1.3 | 3.1 |
外気温度の変化 | -0.9 | 0.2 | 0.6 |
寝室温度の変化 | -11.6 | -14.4 | -14.1 |
掃出【内~外】℃変化 | -5.1 | -4.3 | -3.3 |
出窓【内~外】℃変化 | -5.4 | -4.6 | -5.0 |
掃出 【寝室】-【内~外】 温度差 | 7.1 | 7.7 | 6.2 |
出窓 【寝室】-【内~外】 温度差 | 7.2 | 8.6 | 7.2 |
温度計測データをグラフで可視化して比較
温度計測データを注意深く観察することで気づくものもあるのですが、グラフによる視覚的な比較をおこなうことで、「内窓プラマードUのサイズの違いによる傾向」が見えるようにしています。
寝室を十分に暖めたときの大・小プラマードによる違いは?
19:00くらいからエアコン(設定温度:20℃)をつけて、20:00くらいにファンヒーター(設定温度:Lo)をつけて十分に暖めた状態になります。
外気温度の影響もありますが、下グラフからもわかるように室温は24℃前後になるのようです。その時の掃き出し窓(プラマード 大 )と出窓(プラマード 小 )による違いはほとんどないように思います。
23:00就寝時の「寝室温度」と「内窓~外窓の空間温度」での大・小プラマードの違い
2023.01.28更新
暖房機により部屋が暖められていると、窓越しに外気より奪われた熱エネルギーは暖房により常に補われている状態であるため、窓の性能が分かりずらいのですが、上グラフでは「内窓~外窓の空間」の温度が外気温度<緑の線>に近い方が内窓の断熱効果が高いと判断できると考えています。
十分に暖めた部屋の暖房を切って部屋が保温状態のとき、プラマードの大・小で違いはあるの?
前回の温度計測データでは外気温度が4~10℃の範囲くらいでなだらかに左下がりの傾向にありました。今回は、もう少し低い外気温度のときのデータが取れています。2℃~4℃くらいの外気温度では5:30起床時の寝室温度はあまり下がらないようです。しかし、外気温が氷点下(0℃~ー2℃)になると寝室の温度はさらに若干下がって10℃くらいになるようです。
5:30起床時の寝室温度と外気温度の関係
2023.01.28更新
23:00に暖房を切ってから十分に時間が過ぎている状態となる5:30起床時の温度を比較することで、窓による保温(断熱)性能が分かります。
ここでは、プラマード大・小によりはっきりと違いが出ています。掃き出し窓(プラマード大)<赤い線>のほうが温度が高いため、寝室内から熱を多く奪っていると考えられます。
5:30起床時の「寝室温度」と「内窓~外窓の空間温度」
2023.01.28更新
窓の面積と熱通過率を比較 | |||
2F寝室の内窓比較 | プラマード小(出窓) | プラマード大(掃き出し窓) | |
熱通過率 K [W/(㎡・K)] | 11.8 | > | 11.6 |
K の値が小さいほうが、断熱効果が高い | |||
窓の面積 A [㎡] | 1.58 | < | 3.21 |
窓の開口面積は小さいほど熱を失いにくい |
同じプラマードでありますが、ガラスの厚みがプラマード小3mm、プラマード大5mmと違い、そのためもともとの断熱性能(Kの値は同じ窓の大きさと見なした評価)はプラマード大の方がわずかに有利になっています。
いっぽう、プラマード大は熱通過率Kがよいといっても、開口面積自体が広いため熱を失いやすい条件といえます。
つまり、熱貫流率(熱通過率)は「同じ大きさの窓という条件において窓の断熱効果の優劣を評価する指標」であると言えます。
窓が大きくなるほど熱が逃げやすいため、熱貫流率(熱通過率)が小さい内窓を使う方が良いということが分かります。
プラマードUの大きさ(大・小)により断熱効果は違ってくるのか?
内窓の断熱効果の評価基準について
JIS日本工業規格により下記のようにランクが決めれています。そのなかでも近年では、熱貫流率というワードが評価の主流となっている感じがあります。
ちなみに、この値は内窓単品による評価ではなく外窓と合わせて窓の総合評価となっています。そのため、各社で外窓の設置条件にバラつきがあります。
表中の数値は熱貫流抵抗[Ru 値]は値が大きいほど断熱性が優れています。
内窓の断熱効果の評価基準 | ||
断熱性等級 | 熱貫流抵抗 [Ru] | 熱貫流率 [Ust] |
H-1 | 0.215 [㎡・K/W] 以上 | 4.65 [W/㎡・K] 以下 |
H-2 | 0.246 [㎡・K/W] 以上 | 4.07 [W/㎡・K] 以下 |
H-3 | 0.287 [㎡・K/W] 以上 | 3.49 [W/㎡・K] 以下 |
H-4 | 0.344 [㎡・K/W] 以上 | 2.91 [W/㎡・K] 以下 |
H-5 | 0.430 [㎡・K/W] 以上 | 2.33 [W/㎡・K] 以下 |
H-6 | 0.526 [㎡・K/W] 以上 | 1.90 [W/㎡・K] 以下 |
断熱効果の評価に使っている熱貫流率とは、『1㎡の広さの窓で、窓の内側と外側で1℃の温度差があるとき、1秒間にどれだけの熱が通ったのか』をあらわす数字だということが単位から分かります。
つまり、熱貫流率が小さい方が熱を通しにくいということですね。
そこで、ちょっと下のグラフ(お風呂の内窓の温度計測データ)をご覧いただきたいのですが、このケースでは浴室に暖房を入れているわけではなく、お湯の熱で浴室温度<青い線>が上がったとき、「内窓~外窓の空間温度」<赤い線>は外気温<黄色い線>との間になることは想像つくと思います。
もしも、仮に内窓を閉め忘れスキマがあったとしたら、浴室の熱は内窓と外窓の間に流れて「内窓~外窓の空間温度」が上がります。(<赤い線>は上がますね。)いっぽうで、浴室の熱が逃げるので浴室の温度は下がります(<青い線>は下がります。)よね。
つまり、熱が逃げないように内窓がよく働いたら(熱貫流率が小さい)、<赤い線>は下がるということです。
そこで、室内の温度<青い線>と「内窓~外窓の空間温度」<赤い線>の差が大きいほど内窓の断熱効果が高いと評価しています。(注意:もちろん、外窓の断熱性能の影響は受けます。)
下のグラフでは<青い線>が外気温度を表しています。そして内窓効果(内窓の断熱効果)として<赤い線>は寝室掃き出し窓の(プラマード大)断熱効果を表しています。<黄色い線>は寝室出窓の(プラマード小)断熱効果を表しています。
この結果から、「寝室の温度」と「内窓~外窓の空間温度」の差を表す<黄色い線>と<赤い線>では<黄色い線>であらわす出窓のプラマード小の方が窓としての断熱効果が高いと評価します。
外気温度がおよそ4℃以下になると、大小のプラマードどちらでも6℃~7℃くらいの断熱効果が期待できると言えそうです。
外気温度に対する内窓の断熱効果
2023.01.28更新
データから読み取れる熱貫流率の違いとは
私が簡易計算モデルで算出した内窓単体の熱貫流率は下表のようになりますが、窓ガラスの厚みの違いが影響していることをが分かっています。
そして、通過熱は大きなま窓のプラマード大の方が出窓のプラマード小の約2倍となっています。
計算モデルから求めた熱通過率 | ||
2F寝室の内窓比較 | 出窓(小)プラマード | 掃き出し窓(大)プラマード |
ガラス | 単板 3mm ガラス | 単板 5mm ガラス |
ガラスの熱通過率 | 12.3 | 12 |
[W/(㎡・K)] | ||
窓枠の全体の熱通過率 | 11.8 | 11.6 |
[W/(㎡・K)] | ||
熱通過(W=J/sec) | 244W | 486W |
下のグラフでは5:30起床時の寝室温度<青い線>、掃き出し窓(プラマード大)の5:30「内窓~外窓の空間温度」<赤い線>、出窓(プラマード小)の5:30「内窓~外窓の空間温度」<緑の線>をあらわしていますが、プラマード大の<赤い線>がプラマード小の<緑の線>をわずかに上回っています。これは、窓が大きいがゆえに通過する熱量が多くなってしまったのだと推測します。
次に、グラフの下方には「内窓~外窓の空間温度」の23:00から5:30までの「温度の変化量」を表しています。(暖房を止めていますので、温度は低下するためマイナスの値で表現しています。)掃き出し窓(プラマード大)を<黄色い線>、出窓(プラマード小)を<オレンジの線>で表しています。プラマード大<黄色い線>はマイナスの値が小さく23:00~5:30までの温度変化が少ないことが分かります。これは、プラマード大のほうが熱通過率が小さいために温度変化が少なかったのではないかと推測しています。
5:30起床時の「寝室温度」と「内窓~外窓の空間温度」と外気温との関係
2023.01.28更新
樹脂フレームとアルミフレームの違い 熱伝導率1/1000は事実ではあるが、誤解を招く表現なのでは?
ネットの情報をみていると、「樹脂フレームの熱伝導率はアルミフレームの1/1000」というフレーズをよく目にします。
一応それは事実ですから、学問上は特に問題ないと思います。
アルミ二ウムの熱伝導率237[W/m・K]に対して、樹脂サッシフレームに使用されているPVC(ポリ塩化ビニール)の熱伝導率は0.13~0.29[W/m・K]ですから、たしかに約1/1000なのです。
いっぽうで、内窓の断熱性能評価として熱貫流率(熱通過率)を使用していますよね。今回、簡易計算モデルで熱通過率を計算してみて分かったのですが、計算条件でアルミフレームから樹脂フレームに置き換えても驚くほどには変化しなかったので、『1/1000というイメージ』とはかけ離れているのではないかと思っています。
簡易計算モデルに用いた条件 | |
簡易計算モデルで用いた条件 | 外気温5℃、内窓~外窓11℃、室内24℃ |
フレームの厚み | 4mm |
素材の熱伝達率 [W/m・K] | アルミ 237 、樹脂 0.21 |
アルミフレーム(4mm平板として) | 熱通過率 12.7 [W/(㎡・K)] |
樹脂フレーム(4mm平板として) | 熱通過率 10.2 [W/(㎡・K)] |
熱伝導率とはその物質内を伝わる熱の伝わりやすさを表しています。
いっぽう、窓の断熱性能を評価する際に使っている「熱貫流率」とは、ガラスやフレームなどを挟む空気(流体)に温度差があるときの「空気の熱の伝えやすさ」までを含めた状態での熱の伝わりやすさを表しているため、材料の熱伝導率がそのまま影響するわけではないのです。
ここで使用している簡易的な計算モデルは、立体的(中空形状)なフレームを平らな板に置き換えて計算を行っていますので、ある程度の目安としてご覧ください。
簡易的な計算モデル 樹脂フレームのプラマードでは
簡易的な計算モデル アルミフレーム仮定のプラマードでは
もしも、プラマードがアルミフレーム(仮定)で作られていたら | |||
フレームの材質 | 比較項目 | プラマード(出窓) | プラマード(掃出し窓) |
樹脂フレーム | 内窓の熱通過率 | 11.8 | 11.6 |
窓の熱通過 | 244 | 486 | |
もしも、プラマードが樹脂フレームではなくアルミフレームだったとしたら下の値のようになることが予測できます。 | |||
アルミフレーム | 内窓の熱通過率 | 12.3 | 12.0 |
窓の熱通過 | 253 | 501 | |
熱通過の増加率 | 3.6% | 3.1% |
※内窓の熱通過率[W/(㎡・K)]…一般的には熱貫流率と呼ばれています。数字が小さいほど熱を伝えにくいため、窓の断熱性能が高いと言えます。
※窓の熱通過[W]…室内のあったかい空気から熱が窓に伝わり、そして窓の熱が外の空気へと伝わった(逃げた)ときの熱の事です。
これは、あくまでフレーム形状を簡易的な形に置き換え、理論式を用いてだした値ですので実際の値とのズレがあると思われますのでご了承ください。
私は内窓のフレームが樹脂で作らていることに大いに賛成します。実際に樹脂とアルミでは熱の伝わり方に大きな開きがあり、アルミフレームの内窓だと樹脂フレームより結露の可能性は高いと思います。
アルミと樹脂の素材だけをみると熱の伝わり方に大きな違いがあるのですが、窓の【内側の空気】から、窓の【外側の空気】へと熱を伝える場合は、フレームの素材の違いの影響は限定的だと言えます。(さらに、窓全体に占めるフレームの面積は、ガラスなどの面材よりもかなり狭いため影響は少ないと言えます。)
アルミフレーム 熱通過率12.7に対して、樹脂フレームの熱通過率10.2
たしかに、樹脂フレームのほうがアルミフレームよりも窓の断熱効果を高めるのに効果的であることはわかりますが、「樹脂フレームの熱伝導率はアルミフレームの1/1000」というフレーズに違和感を覚えるのは私だけでしょうか?みなさんいかがですか。
まとめ
今回、寝室に取り付けた大きさの違う 内窓 YKK プラマードU の断熱効果について、実際に温度計測を行うことで比較してみましたが、結果として、わずかな違いではあるのですが出窓につけてある小さいプラマードのほうが断熱効果が高いと判断しました。
内窓の断熱効果についての一般的な評価の指標は熱貫流率という値になります。熱貫流率としては、ガラスの厚みの違いから掃き出し窓につけてある大きなプラマードのほうが良いのですが、実際の温度データから判断すると逆の結果となっています。
熱貫流率という指標は「単位」からも分かるように、同じ大きさの窓を比較するときに有効となります。窓のサイズが違うとき、大きな窓ほど窓から失う熱が多くなり、窓の断熱効果は低くなります。そのため、大きな窓の断熱対策をおこなう場合、より熱貫流率(熱通過率)の値が小さい(断熱効果が高い)内窓を選んだ方が良いようです。
内窓プラマードUの取付けに関する記事はこちらから
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