あなたの身近に、「杖をついて歩く」かたはいますか?
ふだん、杖をついて歩くかたは、高齢になり足腰が弱くなってきているかた、もしくは、何らかの疾患により半身マヒとなってしまったかたではないかと思います。脳内出血によるマヒが残り杖が必要な父を見ていて感じるのですが、できることなら他人に頼り過ぎず「自分でできることは自分でやりたい。」そんな気持ちが伝わってきます。
だから、頭ごなしに「危ないから、あれもダメ。これもダメ。」ではなく、本人がやりたいことは、可能な限り見守ることにしています。しかし、体が不自由になると、体のバランスをとるのが難しいように感じます。だから、家の中の段差は大敵です。極力凹凸がないバリアフリーな床が理想です。
もしも、どうしても段差を排除できないときは、段差を通過するための「手すり」は不可欠です。それから、階段は、できるだけ「なだらかな傾斜」で、しかも、一段一段の段差を低くするのが、ポイントです。
昇降できる「段差の高さ」は、個人のハンディの程度により違いがありますので、細やかな配慮が必要な部分です。もともと、父の自宅リハビリのために作った「土間の上がり階段」でしたが、いまでは、母にとっても便利な存在になっているようです。
高齢の方、あるいは、歩行がやや困難な方には、安全に昇降できる「緩やかな階段」があると便利です。
古民家では高床式の作りが多いそうである(湿気から木材を守るため)
わが実家も、どちらかと言うと高床式である。玄関土間より畳の間までの高さは 約630mm あり、一般的な住宅の上がり框(200mmくらい)の約3倍の高さに達することになります。
幼少期から、その環境で暮らしていると、あまり疑問に思うことなく暮らしていました。しかし、自分の両親が高齢になり足腰が弱くなっていることを実感すると、いろいろと考えが変わってきました。
歴史ある古民家で暮らすみなさんは、ご先祖を敬い、引き継いだ家を大切にして守っています。生活には現代の快適さを求めながらも、その形を変えないよう努めているの方が多いのではないかと思います。
我が家では、先祖から引き継いできた田畑を手放し、親の代で農業の廃業を決めてからは「生きている人を最優先に考え暮らす」ことにしました。
その一つとして土間に階段を作るという思い切った発想をしてみました。
土間に踏板をDIY(奥) 既製品(手前) それでも高齢者には不十分
「 介護保険利用の現状 」 支出を抑えようとする自治体と歯がゆい被保険者家族
介護保険では、自治体により補助金額の差はありますが、
介護に必要な用品を揃えたり、介護用のための自宅リフォームを支援する制度があるようです。
私の実家がある自治体では、介護用品の購入に一割負担で20万円の上限があります。もともとは、その介護保険の補助金を利用して、手すりや階段を購入するつもりでいました。
しかし、残念ながら、
現在は、行政の支援で介護に必要なものをそろえる場合には、リハビリ専門の病院を家族が退院する前に、手すりなどの必需品を揃えることができないようになっています。
退院後に、手すりなどの必需品を手配して揃うまでに、2週間程度の空白の時間ができるようになっていますので、家族としてはかなり歯がゆい思いがあります。制度自体はあるものの、介護必需品が揃うまでの空白の2週間がある為、家族としては、あまり当てにならない制度であると実感しています。
それで、急遽、制作したのが「土間上り階段」や「手すりなど」数点あります。
「 土間の上り階段 」を作る。 木製? それとも コンクリートブロック?
一番最初に、頭に浮かんだのは木製の階段です。75×75mmもしくは90×90mmの角材で骨組みをつくるというものでした。実は、木造で作る場合には、70kgある父の体重を支えるには、かなりしっかりとした構造にする必要があることと、かなりの ” 腕 ” を必要とすることを想像できました。
そうなると、費用もかなり掛かることになります。そこで、コストを抑え、70kgある父の体をしっかり支えるには、「コンクリートブロックが適しているのではないか」とう考えになったのです。この時も、急を要していたため図面を引いていません。
介護福祉士からのアドバイスによると、父の場合、階段の昇降では高低差120mmまで可能ということでしたので、厚み120mmのコンクリートブロックを選択しました。
コンクリートブロックの規格
コンクリートブロックの規格寸法
長さ 390mm 高さ 190mm
厚さ 10cm、12cm、15cm、19cm
コンクリートブロックを使った階段を作る際は、好みの厚さのコンクリートブロックを選択すると良いでしょう。
建築基準法によると、一般住宅の場合の階段寸法は蹴上23cm以下、踏面15cm以上となっています。
多くの人が利用しやすいように作られている公共施設では蹴上15cm、踏面30cmくらいになっているところが多いようです。
私は、コンクリートブロックを使用するときの方向として、長て方向が踏面の寸法になるようにしていますが、コンクリートブロックを横向きに使って踏面19cmとしても、建築基準法に適合した階段のサイズになります。ただし、踏面19cmでは「かなり狭い」印象です。
コンクリートブロックを使ったアイデア階段の概要
ちなみに、私が住んでいる中古住宅の階段は、蹴上21cm 踏面24cmで作られています。
上記の建築基準法の上限の約半分のとなっている蹴上12cm(120mm)の階段は、非常になだらかな登りです。コンクリートブロックを縦長に使っていますので、踏面はおのずと約40cmとなります。
結果的に、半身が不自由な方にとっては、非常に使いやすい階段となっています。また、とくにハンディキャップが無くても、足腰が弱くなってきた高齢者にとっては、負荷が少なく、優しく寄り添うような存在になっているようです。
土間上り階段のブロック積みレイアウト
コンクリートブロック階段の仕上げ
コンクリートブロック階段の仕上げは、コンパネを天板として、コンクリートビスで固定し、踏面の表面には、トイレで使用したクッションフロアの余りを使用。踏面の端部には、ゴム系の滑り止めを両面テープで固定し、コンクリート階段の側面は、コンクリートを水性塗料でこげ茶に塗り、コンクリートブロックがあまり目立たない仕上がりとなっています。
コンクリートを使用できない場合の対処法
コンクリートブロックとコンクリートで階段の基礎をつくりました。コンクリートは非常に重宝する素材ですが、場所によっては使用を躊躇してしまうかたが多いのかも知れません。
そんな方は、コンクリートの代わりに接着剤を使ってみてはどうでしょか。実は私の弟が義母のために、私をまねてコンクリートブロックで階段を作ったそうです。
その時、「コンクリート(モルタル)」ではなく「コンクリート用接着剤」を使ったそうです。身内ながら、良いアイデアだと思っています。接着剤であれば、コンクリートのように汚れる心配もなく、後片付けが非常に楽であるし、管理が簡単な点が素晴らしい。
土間上り階段の構造詳細
階段は、基礎となる部分をコンクリトブロックで作っています。それで、もしもコンクリートブロックだけで仕上げた場合は、あまりにも硬くて、冷たい仕上がりになってしまいます。ですから、階段を上り下りする「足への衝撃を和らげる」ために、コンパネとクッションフロアをコンクリートブロックの上に取り付けました。
コンパネはコンクリートブロックに樹脂プラグ用の穴をあけてビスによる固定となっています。その際、コンクリートブロックの穴の部分ではなく、節のところに樹脂プラグ用の穴をあける方が良いでしょう。また、仕上げに各段の淵に「滑り止め」を取り付けると安心です。両面テープで簡単に取り付けることができるものもあります。
土間上り階段の構造詳細
土間上り階段の仕上がり
階段最上部から和室用手すりへ
広い階段の踏面
階段昇降用の手すり 介護用手すりDIY
土間上り階段に、手すりを付けています。こちらも、介護福祉士より頂いた情報により、手すりの高さを決めています。わたしの父の場合、800mmが良いとの事でしたので、床から手すりまでの高さを、800mmにしています。
「手すりの高さ」は体の状態であったり、体格などにより、” 一人一人違う ” ようですので、実際に「ご自分で家族のために手すりや階段を作る」場合は、介護の専門職の方の意見をお聞きしてから、制作されることをおすすめ致します。
下記に紹介している手すりは、できるだけ簡単に製作できるような手すりを、私が図面なしで制作したものです。手すり取り付けのベースになるフレームを簡単なビス止め構造で作っています。コンクリートビスを打つ作業だけは多少大変かもしれませんが、他はいたって簡単です。
木材の組み方としては、上からの荷重をしっかり受けるように乗せ掛けにしています。それから横方向からの加わる力への対策として金属製のL曲げブラケットで補強しています。
シンプル構造の階段用手すり
土間上り階段に設置した手すりの固定法
階段昇降用手すり 介護用手すりDIY(上がり框)
土間上り階段の側面に取り付けた手すりのほかに、反対側の上がり框にも手すりを付けています。手すりの固定方法は、上がり框にビス止め。この手すりを上からみると、コの字型をしていて、安定感を出せるようにしていたつもりでした。
ところが、下のスケッチからも分かるように、コの字型の角部の肝心な柱をベース木に乗せるような構造にしていたので剛性が不足していたようです。
これは、図面を引かずに製作をすると、このようなミスはありがちです。
何度も写真を確認して、スケッチを起こしていたのですが、なぜこのような構造にしてしまったのか謎です。後日、家族から剛性不足を指摘され、2本のフレームを筋交いとして追加して剛性対策をしています。
この手すりを製作した時は、時間にまったく余裕がなく、何とか父の退院に間に合わせた製作品なのですが、こういう失敗をみて改めて図面の必要性を実感します。
上がり框に取り付けた手すり
上がり框の手すりの固定法
- コンクリートブロックを使い丈夫で安価な階段
- 一段一段が低くて上り下りがらくらく
- 高齢者にやさしい階段
他にも介護関連のDIY製作品に関する記事があります。よろしかったご覧ください。
まとめ
記事内でLIXILの記事を引用していましたが、この記事は、この「土間上り階段」を制作後に読んだものです。
その中で、「上りやすい階段寸法」として紹介されているのは、公共施設などで採用されている緩やかな階段として「蹴上15cm、踏面30cm」という寸法だったのです。
私が作った「土間上り階段」は「蹴上12cm、踏面40cm」ですから、この数字からも分かるように、さらに緩やかな階段に仕上がっていることをご理解いただけると思います。
足腰が弱くなった高齢者や、半身にマヒが残っている方などに、優しいユニバーサルデザインとなっていると思います。もしも、コンクリートブロックにて「土間上り階段等」を作る場合は、スペースの都合がつくようでしたら、是非コンクリートブロックを長て方向に使って「踏面を40cmにする」ことをおすすめします。
とりとめのない記事ですが「ほんのり豊かに、快適に暮らす」ためのヒントになりましたら、幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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