かつて中空ポリカーボネートは手軽な断熱材料だという認識だったのですが、残念ながら物価高騰の影響を受け現在は割りと高価な印象を受けるようになっています。それでも、加工が比較的簡単なため、今でもDIYの材料として魅力的です。
中空ポリカーボネートは軽量で取扱いやすいため、DIY内窓の面材としても適していると思います。今回は、玄関ドアとドア周りの面材ガラスの断熱効果を高める中空ポリカーボネートを使ったDIYペアガラスについてご紹介します。
中空ポリカーボネートを使った簡単なペアガラスDIY
ガラス扉の玄関について断熱対策を考える
ガラスを多く使った玄関では、北向きであってもやさしい光りが差し込む比較的明るい空間となるようです。しかし、ガラス面の広さによる「明るさ」と「断熱効果」はトレードオフとなってしまいます。
ガラス戸は夏には涼しい印象を受けますが、冬は雰囲気的にも寒いし、やっぱり寒いものです。さて、この明るい玄関の雰囲気を壊さずに断熱効果を高めるにはどうすべきか?
厚さ5ミリのガラスを多く使った玄関
玄関まわりの構造を観察
我が家の玄関扉はユニットになっていると思われます。そして、玄関扉ユニットの外枠は□55ミリの角パイプを基本形状としています。面材は厚さ5ミリの型ガラスを使用しています。ガラスの左右は55ミリ幅の窓枠(アルミ角パイプ)にはめ込むようになっており、ガラスの上下は厚さ25ミリのアルミフレームにはめ込む構造となっているようです。
フレーム厚さ25ミリ ガラスとフレームの段差10ミリ
郵便受けのある窓枠の中央部分は
ガラスの左右は窓枠である□55ミリのアルミ角パイプにはめ込み、厚さ25ミリのアルミフレームで下のガラスと上のガラスを支持するようになっています。
ガラスと横フレームには屋外側と室内側にそれぞれ10ミリの段差があることになります。
中央部 窓枠とフレームの段差15ミリ 柱厚さ55ミリ
玄関窓枠の下部には
窓枠の下部にも25ミリのアルミフレームが使用されているため、ガラスと下部のアルミフレームには10ミリの段差があり、アルミフレームと窓枠のアルミ角パイプには15ミリの段差があります。
下部 窓枠とフレームの段差15ミリ
玄関窓枠の上部には
窓枠の上部のつくりは下部とほとんど同じになっています。厚さ25ミリのアルミフレームにガラスの上部をはめ込むようになっています。 ガラスと上部のアルミフレームとの段差は10ミリ、アルミフレームと窓枠のアルミ角パイプとは15ミリの段差がある構造となっています。
上部 窓枠とフレームの段差15ミリ
本格的なペアガラスを簡単にDIYするエリア
下写真のグリーンで囲った部分は窓枠のアルミ角パイプ(□55ミリ)とガラスの段差として25ミリあるエリアです。DIYペアガラスとして使用する厚さ4ミリの中空ポリカーボネートを収めても約20ミリのペアガラス空間を作ることができます。
窓枠とガラスの段差が25ミリあるエリア
本格的なDIYペアガラスの構造とは
本格的なDIYペアガラスの構造を簡単に説明すると、下のイラストのように追加した□15ミリのアルミフレーム(黄色い部分)で玄関扉ユニットの段差をなくします。
次に、断面図(イラストの下半分)を見ると、明るいみどり色で表しているのがサッシのガラスになります。ガラスのすぐ上にスポンジシール材(黒く四角い断面)を枠をふちどるように貼っています。
スポンジシール材の上に中空ポリカーボネートをのせて、最後に薄いアルミフラットバーを両面テープで貼り付けて完成。
DIYペアガラスの断面
もっと詳しく知りたい方は、こちら「中空ポリカを使った簡単ペアガラスの作り方」をご覧ください。
扉に関しては、扉の枠とガラスとの段差が5~6ミリであるため、4ミリの中空ポリカーボネートをそのままはめ込むことにします。
木材を使って郵便受けの台座を製作
玄関扉の固定窓部分は厚さ25ミリのフレームと55ミリの窓枠との間に15ミリの段差があります。そのため、郵便受けがある中央部分も全体的に15ミリ嵩上げする必要が出てきました。
こんな時は、比較的に加工しやすい木材の利用を検討してみてはいかがでしょうか?
以前にDIYした郵便受けをそのまま使用するため、□15ミリの木材を木工ボンドで接着して嵩上げ用の台座をつくりたいと思います。
嵩上げようとして準備した木材
郵便受け台座の角材をカットする
□15ミリの角材を使って長方形の木枠を作ることで郵便受けの台座としています。木枠は長い木材を投函部カバーの横幅に合わせています。
のこぎりガイドを使用して角材をまっすぐにカット
使用する木枠の材料が細いためビスは使用せず木工ボンドを使って木枠をつくります。投函部カバーの高さから30ミリ引いた長さで縦の木材をカット。(木枠の縦幅が投函部カバーの高さと同じになるように)
4本の長さを揃えるために4本を同時にカット
4本の細い角材の長さを揃えるために、角材をまとめて同時にカットしています。カット面をキレイにするためにノコギリガイドを使用していますが、それでも機械カットのようにはいきません。
ですから、最後はサンドペーパーで微調整の仕上げをしてから接着作業に移っています。
のこぎりガイドを使用するとカットが楽
郵便受け台座の木枠を木工ボンドを使って成形
通常の木工ボンドは、接着乾燥まで時間が掛かりますので時間に余裕をもって作業計画をたてましょう。
ちなみに、私は下写真のように短い角材をクランプで固定して半日ほど放置しています。
ペーパーでカット面を整えてから木工ボンドで接着
さらに、その後はL型クランプで木枠を形どる状態で一晩放置して木枠を完成させています。
L型クランプで木枠を固定して木工ボンドを固める
水性塗料で木枠を仕上げる
塗装も時間が掛かりますので、時間に余裕をもって作業計画をたてます。例えば、翌週の週末に組立作業をおこなうために、平日の朝に一度塗って、夕方にもう一度塗る。こうすれば2~3日でしっかりと着色できます。
嵩上げ用の木枠を塗装
アルミ角パイプを使って玄関扉ユニットの段差をなくす
仕上がりをキレイにするためには、全体の形状を単純化するのがおススメです。特に段差がある状態のまま加工すると、部材のカットが複雑になり作業の難易度もグッと高くなってしまいます。
アルミの角パイプも数種類のサイズがあるし、あるいは「コの字断面形状」のアルミ材を使っても良いかも知れません。とにかく、段差をなくすように処理をすると後工程の作業が楽になります。
□15ミリのアルミ角パイプをカットして両面テープで固定
アルミ角パイプを両面テープで貼り付ける
両面テープは非常に便利ですので、作業を簡単にするためには必須アイテムといえます。しかし、諸刃の剣であることも十分に承知して使用しましょう。
部材によっては両面テープの使用が適さないものもあります。以前、簡易内窓の樹脂の窓枠フレームを両面テープで木枠に貼り付けたのですが、すぐに剥がれてきました。
木材に両面テープを使用する場合は、あくまで「仮止め」用として両面テープで位置決めしてビスで固定するのがおススメです。
□15ミリの角パイプを貼って段差をなくす
〇【軽い部材の固定に使用する】両面テープを使用する際、まずは部材の重量が軽い事が必須となります。重いものを固定することは出来ません。
〇【接着面をキレイにする】接着面をキレイにすることで接着強度を高くすることができます。アルコール等をつかって油分やホコリをきれいに除去します。
〇【接着面積を最大限に使う】接着したい部材のサイズはさまざまだと思いますが、強力な接着力を得るには接着面に両面テープを余すことなく貼ります。その際、両面テープが重なってしまわないように注意し、はみ出した両面テープはハサミあるいはカッターナイフで除去します。
中空ポリカーボネートを固定して簡単ペアガラス化
サッシガラスの断熱効果を高める手ごろな方法として、断熱効果の高い中空ポリカーボネートを使わない手はないと考えています。
中空ポリカーボネートそのものはクリアであるため室内が暗くなる心配もなく、中空層をもつ構造となっているためたいへん軽い素材となっています。外観は縦じまの型ガラスという雰囲気が漂っています。
スポンジシール材で中空ポリカの取付け準備
ガラスから10ミリ張り出したアルミフレームに□15ミリのアルミフレームを貼って窓枠との段差をなくした(つまり、ガラスから25ミリ幅)のところに幅15ミリのスポンジシール材を貼りつけています。
ペアガラスとして4ミリ厚の中空ポリカーボネートをとりつけますので、下写真のようにアルミフレームの側面から4~5ミリ内側にスポンジシール材を貼っています。スポンジシール材は枠内の4面に貼り、スポンジシール材の側面に中空ポリカーボネートを載せる状態とします。
スポンジシール材を4ミリ(中空ポリカの厚み)逃がして貼付け
中空ポリカーボネートを押えるアルミフラットバー
厚さ1.5ミリの薄いアルミフラットバーを使って中空ポリカーボネートを押えるという非常にシンプルな構造となっています。
使用するアルミフラットバーは必要な長さにハンドグラインダーでカットし、バリやカエリをヤスリで仕上げます。
アルミフラットバーをカットしてヤスリで仕上げ
アルミフラットバーは25ミリ幅のものを使用しており、十分な貼付け面積を確保するようにしています。15ミリ幅の両面テープを使用していますので、残りの10ミリ幅で中空ポリカーボネートを押えるようになります。
25ミリ幅のアルミFBに15ミリ幅の両面テープを貼る
アルミフラットバーを貼って中空ポリカを固定
長方形にカットした中空ポリカーボネートをアルミフレームとスポンジシール材で作った窪みにはめ込みます。そして、中空ポリカーボネートの4辺をそれぞれ4本のアルミフラットバーで押えています。
4辺のうちの上下のアルミフラットバーは下写真のように中空ポリカーボネートの幅より20ミリ短く(左右それぞれ10ミリ短くなるように)しています。
アルミFBの10ミリ幅で中空ポリカを押える
左右のアルミフラットバーは上下に貼り付けたアルミフラットバーの距離を測ってから長さを決めています。(図面上では中空ポリカの上下幅より30ミリ長くする)
上下のアルミFBは中空ポリカの幅より20ミリ短い
中空ポリカを使った自然な仕上がりのDIYペアガラス
アルミサッシと同色でしかも薄いアルミフラットバーを使用することで、スッキリとした仕上がりとなっています。
□15ミリのアルミ角パイプはキレイに隠れてる
中空ポリカーボネートをカットするにはちょっとしたコツがあります。是非こちらの記事をご覧ください。中空ポリカーボネート板をカットする方法
高い断熱効果が期待できる簡単DIYペアガラス
このDIYペアガラスはサッシガラスと中空ポリカーボネートの間には約20ミリの空間ができています。また、中空ポリカーボネート自体も中空構造となっていますので、より高い断熱効果の向上が期待できます。
板ガラスと中空ポリカの間に約20ミリの空間ができる
DIY郵便受けをリユース
玄関扉ユニットでは上下のガラス板を隔てる中央のアルミフレームに郵便受口を作りつけていますが、上下のガラスはペアガラス化するために15ミリのアルミフレームで嵩上げしています。
角パイプ15ミリ+FB1.5ミリ 合計16.5ミリの窪み
郵便受け台座木枠の穴加工
このままでは、中空ポリカーボネートの端材で作った郵便受けをリユースすることができません。そこで、考えたのが木枠でつくる台座。
塗装した木枠に郵便受け金具を重ねて、取付け穴の位置を加工します。下写真のように木枠に金具をのせて穴の位置にマーキングをしてからドリルで穴をあけると穴位置がズレることはありません。
郵便受け金具1ミリ+木枠15ミリ 合計16ミリ
郵便受け台座木枠の取付け
最初に郵便受け金具を取付けてアルミフレーム貫通部の側面を塞ぎ、その上に木枠を重ねます。最後にDIY郵便受けを取付ける。
郵便受け木枠とペアガラスの押え板はほぼ同じ高さ
このとき、DIY郵便受けを固定するためのネジは以前のものは使えなくなります。DIY郵便受けを取付ける際も元々のネジよりも中空ポリカーボネートの厚みのぶんだけ長いネジに変更していました。
今回は、さらに厚さ15ミリの木枠のぶんだけネジを長くする必要があります。
郵便受け固定用ネジは15ミリ長いものに変更
DIY郵便受けの取付け完了
DIY郵便受けには、中空ポリカーボネート板とポリカーボネートのボルトとナット、そしてアルミアングルフレームを使用しているのですが、特に気になるような劣化は見受けられません。
なので、そのまま再利用という判断をしています。実際、DIY郵便受けはシースルーな仕上がりであるため、郵便物の視認性が良いところが最大のメリットだと実感しています。
DIY郵便受けを再利用
玄関扉ユニットのペアガラス化 完成
施工前の写真と比べてみると少しだけ霞んだ印象をうけますが、変わらず明るい玄関の印象を保つことができたのではないかと思います。
玄関スペースを直接温めることはないので、暖房を使用したときの熱を逃がさない効果は感じにくいのかもしれませんが、外気温下がったときに室内へ侵入する寒気の侵入を食い止める効果が期待できます。
玄関扉ユニットのペアガラス化 完了
ちなみに、ガラス戸部分についてはガラスとフレームの段差が5ミリほどしかありませんので、ガラス面に直接中空ポリカーボネートを合わせて同じようにアルミフラットバーで4面を固定しています。
まとめ
玄関扉ユニットを中空ポリカーボネートを使ってペアガラス化してみましたが、玄関のペアガラス単独で断熱効果を数値化するのは難しいようです。(簡単に取り外しができないので温度比較が困難)
それでも、外気温度が下がった時に外部から侵入する冷気をペアガラスが抑えてくれるので、室内で使用する暖房の熱を奪われにくくなると思われます。つまり、少ないエネルギーで暖をとれるということ。
誤解をしてほしくないのですが、家のいたる所を断熱したからといって部屋の中が勝手に暖かくなるのものではありません。それでも適切に暖房を使用して部屋を暖めてみると部屋が温まるまでの時間が短くなることが実感できます。つまり、地味ではあるのですが光熱費を抑えることが期待できます。
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