木工をDIYするとき、趣味として、たっぷりと時間をかけてより高度な技法を試したい本格派の方もいれば、私のように必要に迫られて、週末のみ作業をするかたもいるでしょう。
そんな、限られた時間の中で、廃材を使いそれなりに機能する開き戸をできるだけ簡易的な方法で作ってみようと思いますので、ウィークエンドにDIYしている方にとって参考になりましたら幸いです。
「モノづくりの楽しみ」を味わいつつ、成果としてそれなりの形になると嬉しいものです。
解体した古民家の廃材を再利用して開き戸を「ほぞ組み」を使わないでDIYしてみる
CADで開き戸の図面を描き、レイアウトを検討
開き戸のレイアウト
作業時間が限られている人ほど、作業前の準備をしっかりしたいものです。私はその中でも図面は非常に大切だと思います。
ものをつくりながら、トライアンドエラーで何とか形にするのも悪くはないのですが、図面のない作業現場ではスムーズに作業が流れなく、材料を買い足しするために作業を中断してたびたびホームセンターに駆け込むことになってしまいがちなのです。
作業時間が限られている人ほどしっかりと計画を立てたいものです。取り付けする現場の寸法を測定してCADでその現場のレイアウトを再現することで、CAD上でいろんな取り付け方法をトライできます。
あるいは、CAD上で開き戸を開けてみると開き戸のサイズを小さくしないと干渉してしまうことが分かったりします。また、丁番の取り付け方次第で扉の動きが変わってきますので、その開き戸を通常は開けておきたいのか、あるいは通常は閉めていて必要な時だけ開けたいのかなど、開き戸の使い方によって丁番の取り付け方も変わってくると思います。
慣れるまでは、CADに時間がかかり過ぎるという問題があるかもしれませんが、工業製品などと違いDIYでつくれるようなものなら、そこまで複雑な形状になることはありませんし、比較的簡単ですから、CADでの作図に慣れてしまうと非常に便利ですよ。ちなみに、図面を書いていても実際の作業を行うときに不都合があれば、柔軟に設計変更をしていきます。
もしも現場で変更することが出てくるとしても、図面を書くことで「どのような材料をどれだけ必要か」、あるいは「どんな工具が必要か」をあらいだすことができるので、準備も含めた全体の流れが非常にスムーズになります。
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開き戸の木枠を作る
先日、古民家の蔵を解体したことで、残った納屋に直接風が当たるように住宅環境の状況が変わってしまいました。もともと、蔵が防風壁の役割を担っていたため蔵の痛みもひどかったのですが、いざその蔵が無くなったことで、残った納屋が風の影響をもろに受ける状況となりました。
そこで、その納屋の屋根が飛ばされないように、吹き抜けの入り口に防風戸として開き戸を設置することとなったのです。
トリマーを使い角材に溝を加工する
開き戸の作り方として選択した方法は、扉の枠を新しい角材でつくり、その角材の内側に溝を彫り、その溝に解体した蔵からでた古材の床板をはめ込んで扉をつくるやり方としました。木枠は□45mm木材のを使って、各コーナーを45°にカットして付き合わあせる構造としています。
もしも、本格的な建具を作る場合は木枠の継ぎ部にホゾを加工するのですが、加工の手間がかかってしまうため、私はあえて選択していません。時間が十分にある方にとってはチャレンジしてみる価値があると思いますよ。
今回、製作する開き戸のサイズはH1990×W850、製作数は2個となります。それで準備した木材は2ⅿの□45mmを6本です。多少の端材は発生しますが、まずはすべての角材に幅18mm、深さ15mmの溝をトリマーで掘っています。(組立の際に、板が溝に入らないところが出てきたため最終的には溝幅を20mmに変更しています。)
古材の板は100年以上も昔のモノであり、板厚にはかなりばらつきがあります。そのため、薄めの板を選ぶことにより、電動鉋で削る量が少なくなるようにしています。
木材の端材で加工用ガイドを作業台にビス止め
木材の端部のストッパーとなります。
角材を挟み込む加工用ガイド
手前から奥に向かって加工しています
トリマーは横方向と深さ方向のガイドで調整
目的の加工にあわせて、奥行や深さを調整したガイドを加工材にしっかり当てるようにします。
加工を終了した様子 かなりの木くずが発生します
トリマーを使うときのワンポイント
トリマーを使うときは刃の回転方向を意識してガイドを上手く使いたいものです。下の絵では右に回る刃が木材に当たるときに刃がトリマーを下の方向に弾くような力かかってしまいせっかくのガイド(緑で表しています)が木材から離れてしまいます。
参考記事の紹介
後に、トリマーを使う際のコツをつかんでいます。角材に溝を加工する場合はトリマーを横向きの状態で加工する方が安定するようです。トリマーによる溝加工のコツを紹介いした記事がありますのでよろしかったらご覧ください。
トリマーガイドが弾かれて溝がガタガタ
結果として、加工して溝がデコボコになってしまいます。
トリマーガイドは木材に押さえ付けられる
コチラの加工法をおすすめします。右回転の刃が木材に当たった時に、ガイドを木材の方向に押さえつけるような方向に力かかるため、トリマーは安定します。
もしも、よりきれいに仕上げたい場合は
一度、粗削りしてから二度目で仕上げる方がキレイに仕上がると思います。例えば、20mm幅の溝を切るとき最初に14mmくらいの刃で一度溝を切り、その後にガイド方向を間違えないようにして3ミリずつ削ることでトリマーを連続して送る動作がしやすくなります。
ただし、この方法は溝幅の正確性を求める場合はガイドの調整が非常に面倒になりますので、一長一短といったところです。
トリマーは、滑らかに連続して送るほうがキレイに仕上がります。途中でトリマーを止めるてしまうと、そこの部分に焼けて焦げたような跡が残ってしまいます。
丸鋸(丸ノコ)で角材を45度にカット
作業台にガイドを設置しています。
二本のガイドでカットする木材を固定し、右側に斜めにセットしたガイドで45度のカットをします。
私が行った方法は非常に原始的ですが、試し切りを何度かして微調整することにより、それなりにきれいに仕上げられると思います。
端材をビス止めした簡易切断ガイド
少々高価になりますが、加工機を購入する余裕がある場合は、丸鋸をあらゆる角度にセットしてきれいに切断できるもの(卓上スライド丸ノコ)もありますのでそちらを使うときれいに仕上がりますよ。
45度に切断した様子
下の写真の右側に見えるのは丸ノコのガイドとなる角材です。カットしたのは写真の左下に見える角材で、暗くて見えずらいけどもカットラインがガイドと並行して残っています。
ガイドと丸ノコで45°に切断
丸ノコはカットする木材の厚みとほぼ同じにしています。
丸ノコの刃の出し具合は、カットする材料よりほんのわずかに刃が出るくらいが良いでしょう。
丸ノコの切り込み深さの調整
コーナークランプで木枠を固定してビス止め
今回はホゾ継ぎを使用しない簡易的な建具のつくりかたを紹介しています。週末しか作業時間を確保できない状況の方にとっては悪くない選択かと思います。
何週間かけてもいいから本格的な建具を自分で作りたいとお考えの方は、どうかじっくりと時間をかけてホゾ継ぎしたり、板の厚みも均一になるまでトコトン鉋で仕上げるのもいいと思いますよ。
あるいは、そこそこの仕上がりで良いから、時間をあまりかけずに出来るだけ簡単に作りたい方にはコーナークランプを使ってビス止めすることをおすすめします。
コーナークランプ
コーナークランプで建具枠を突き合わせた状態
コーナークランプを使うと、木材を直角に保つことが非常に楽になりますので、ビス止めの効率も上がります。
建具の角部をコーナークランプで固定(45°に切断した木材)
ビスで固定
下穴をあけて、ビスを2本止めています。(上の方は下穴、下の方はビス止めまで完了しています。)今回、木枠の上下方向からのビス止めとし、作業の簡略化のため座ぐりは行っていません。
「座ぐり無し」のビス止め
木材の加工 電動カンナで古材が蘇る
下の写真は100年以上前に建てられた蔵の解体時に、処分せず取っておいた床板です。板自体は非常に厚くしっかりしています。
さすがに見た目はかなり汚れていますが、過ぎた年月の長さをはかり知れ、感慨深いものがあります。
古民家の古材を再利用
電動カンナで板の表面を削る
さすがに古い木材とあって、同じ床板でも板厚にはかなりばらつきがあります。本来なら、せっかく電動カンナがあるのだから同じ板厚になるまで仕上げることもできたのですが、時間の都合と使用目的から、そこまでこだわらなくても良いと判断しました。
それから、電動カンナを使ったことがある人は分かっていただけるとおもいますが、電動カンナの削りカスの量が結構半端ないのです。木くずの処分を考えるとあまり削りたくないので、古材の表面を一皮むく程度の仕上げに留めています。
電動カンナで古材が蘇る
使用してた電動カンナ
DIY用としてはコレでも十分かと思いますよ。削り量は0~1mmをダイヤルで任意に簡単に設定できます。
DIY用の電動カンナ
古材の板の表面を一皮剥いた様子
一皮剥いただけで、こんなにきれいになりますよ。
古く見えた木材の内部はまるで新品
床に散らばる木くず
今回はトリマーと電動カンナで削った木材の切りくずがほどんどです。下の写真に写っているのはほんの一部です。
トリマーや電動カンナで木を加工する時は、大量の木くずが出ることを前提に場所の確保や養生をされることをおすすめします。
電動カンナ作業 大きな音と大量の木くず
開き戸の組み立て
長さを揃えた板を一枚ずつ木枠に入れいていきます。最後の一枚は現合で合わせました。木枠には深さ15mmの溝を掘っていますので、下の写真に見えるように45度にカットした木枠の内側から13mmくらい出る位置で最後の板をカットしています。
開き戸の組立
最後の一枚は現合でカット
最後の一枚の板は下の絵のように一度木枠に仮組します。その時、横枠の45度にカットした部分の一番内側の角より13mm外側でカットしています。
つまり、最後の木枠を組んだ時に木枠の15mmの溝に13mm入り込む程度になるように最後の板をカットするということです。(木枠の溝に対して少し余裕があることが望ましい)
最後の板のカット寸法
開き戸の取り付け
今回は築100年以上の大変古い古民家の納屋に、廃材を利用した開き戸を取り付けるDIYですが、私がものごころつく頃から扉は存在していなかったところであり、扉がなくても何ら問題はなかったのですが、隣接していた蔵を解体したことにより状況が一変しました。
扉が無かった間口が吹き曝しの環境となったことで、強風が吹いたら屋根が吹き飛ばされてしまう可能性が高くなったのでした。そこで、台風のシーズンが訪れる前に対処すべく、蔵の解体時にでた廃材を利用して作った開き戸を納屋の間口に設置することにしました。
開き戸の取り付けベースをつくる
CADで開き戸の設置を検討した結果、納屋の間口の柱にそのまま扉をつけた場合、扉を開いた際に扉が奥の壁にぶつかってしまうことが分かりました。
そこで、扉の横幅を狭くしました。もちろん納屋の間口幅に対して開き戸2枚分の幅では不足するのですが、その不足分を開き戸のベース材として柱に沿わせもう一つ角材を取り付けることとしました。
廃材(古材)の角材を削ってベース材をつくる
電動カンナで15mmくらい廃材を削って、開き戸のベース材としてほしい厚みの角材に仕上げている様子。
電動カンナで古材を再生
既設柱のホゾとの干渉を避けるための、逃がし穴を加工
既存の柱に合わせて取り付ける面であり、外から見えることは無いので、電動丸ノコで切り込みを入れて、ノミで削り出しているところです。電動丸ノコの余分な切り込みが残ることとなりますが、余り気にしなくて良い部分です。
逃がし穴の加工
納屋の内側から見た様子
写真の右側は、既存の柱に取り付けたベース材です。写真奥のレンガを敷き詰めたところは解体した蔵の間取り跡となります。
ベース材の取付け完了
丁番で開き戸を取り付け
丁番の取り付け方は扉の使用環境や扉の使用状況により異なってきます。一見すると簡単に思えますが、丁番の動きをよく考えて検討する必要があります。
丁番の取り付け位置を検討中
バランスの良い配置を決め、取り付け位置のマーキングを行った様子となります。その後、丁番の取り付け部をノミで削って調整します。
蝶番の取付け位置の検討
丁番を取り付ける部分を削った様子
丁番の管の部分をしっかりと逃がすために、建具の角部を斜めに大きく削り取っています。
蝶番取りけ位置を削りとり
ベース材(柱側)にも、丁番の管を逃がす穴を加工しています。
ベース材に蝶番の逃がし(管のふくらみ)
開き戸の開閉確認と鍵金具の取り付け
今回取り付けた開き戸は、奥側に開く(建屋の内側に開く)作りにしています。なぜなら、この開き戸は通常は開けた状態とし、台風などの強風が予測されるときに防風戸として使用することを目的としているからです。
扉の固定の方法は、角材を留め具に通す古典的なスタイルとしています。
角材を使って扉を固定
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まとめ
木材は大変便利なマテリアルです。古くから使用されていて、今なお重宝されています。特に住宅の建造には欠かせません。
今回は実に100年以上前に、職人により加工されて使用していた古い柱材と床板を再利用して開き戸を作ってみました。この古い木材は多少虫食いの被害にあってはいるものの、大変しっかりしています。木の種類を特定することはできませんが、板厚もかなり厚くて丈夫な材料ばかりです。そんな古い廃材もカンナをかけることで見事にリフレッシュさせて再利用できます。
また建具づくりでは、職人さんのようにはいきませが木枠にルーターで溝を削ることができれば、ホゾ組みなしでもある程度の開き戸をつくれると実感しています。時間をじっくりとかけて本格的な建具をつくるのも良いですし、時間をあまりかけることができない方にはビス止めによる建具づくりを試してみてほしいものです。
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